日本漫画家協会オークションで落札した高額サイン色紙 劣化させないにはどうしたらいい? 額縁専門店で聞いてみた
■劣化を防ぐためにはどうする?
久永工房長は、画材を扱う企業で長年仕事に従事した経歴をもち、油絵、水彩画の額装はもちろんだが、プロの漫画家の原画の額装も何度も手掛けたことがあるそうだ。ゆえに、常に作品の劣化を防ぐ額装を心掛けているという。
「私がお話した修復家の先生の中には、『絵画を劣化させているのは額縁屋だ』と言っている人もいました。色紙や絵画の寿命はオーナーよりも長いのが普通です。次の世代に作品を受け渡すためにも、経年変化を可能な限り抑えるのがオーナーの努めだと思います」
では、経年変化を速めてしまうのはどんな行為なのだろうか。例えば、色紙と裏板の間に挟むことが多いボール紙は、色紙に使われた紙の劣化を速めてしまう要因となるため、おすすめできないという。日本は湿度も高く、季節による気温の差が激しいため、ビニールに入れたままだとカビが生える恐れがある。そして、最大の敵は直射日光や照明の光だ。漫画家の色紙は、水彩絵の具やアルコールマーカーなどの画材で描かれることが多く、光を当て続けると次第に色褪せ、当初の美しさが失われてしまう。
「美術館で定期的に作品の入れ替えをするのも、経年変化を防ぐためです。美術館ほど空調や管理体制がしっかりしている場所でも、そこまで気を使っているわけです。特別な設備がない一般家庭では、なおさら作品の経年変化が進んでしまうことがわかりますよね。居間や玄関に絵をずっと飾り続けている例がありますが、たまには取り外して作品を休めてあげることも大切ですね」
このように、色紙はなかなかデリケートなのだ。対策としては、ボール紙の替わりに、裏板と色紙の間に特殊なフィルムも挟むのも最適という。紫外線を除去するアクリル板のほか、紫外線を70%以上カットでき、低反射性に優れ、映り込みの少ないガラスもある。これらは、美術館にある文化財級の絵画の額装にも使われているそうだ。
■額の見た目も大事 造形深いイラストレーターが相談に乗ってくれる
さて、棹のデザインはあくまでも二の次……とは言うものの、やはり額を選ぶときに重要なポイントになるのは言うまでもないだろう。そうした棹選びの相談に乗ってくれるのが、イラストレーターの久永フミノだ。自身の作品を自ら額装するほど、造詣の深い人と話ができるのは心強い。久永は里中満智子の色紙を見ながら、棹のデザインをこう提案する。
「里中先生の絵はとても繊細ですし、美しい額田王とユリの象徴的なイメージから、古代日本の潤いを感じます。イメージに合わせて選ぶなら、棹は日本らしい雰囲気で、どっしりしたものよりも華奢なものが良さそうです」
会話をしながら額を選ぶのは楽しいものだし、家族経営の小規模な店で買い物をする醍醐味といえるだろう。フレームは、数年前からコミティアにも出店しているので、会場でも相談を受け付けている。漫画家の色紙や芸能人のサインはもちろん、自作の絵画やイラストを額装したいという人にもおすすめしたい店だ。
こうして、筆者は「税込で3万円くらい」という予算を伝え、保存性を重視し、棹のデザインは久永フミノにお任せして、額をオーダーした。到着を心待ちにしたいと思う。
フレーム
千葉県大網白里市大網73-17
Tel:0475-73-4549
時間:10:00~18:00
休:日~火曜、祝日 ※事前電話があれば休日も対応。
https://www.frame206.com/