池井戸潤の3年ぶりの新作、意外なコラボや周年記念本まで……立花もも解説! 9月の文芸書週間ベストセラー

立花もも解説! 9月の文芸書週間ベストセラー

「十二国記」30周年記念ガイドブック (新潮社)

 4位は『「十二国記」30周年記念ガイドブック』。累計1280万部を突破する、いわずとしれた小野不由美の大人気シリーズ、完結を記念しての一冊である。小野不由美のインタビューや、幻の短編が収録されているのはもちろんのこと、萩尾望都、羽海野チカ、藤崎竜、遠田志帆など、錚々たるメンバーによる描きおろしイラストがフルカラーで掲載。冲方丁、辻村深月、そしてここでも萩尾望都と、やはり豪華執筆陣による特別エッセイも収録と、隅から隅まで見どころ満載。

 そんななか、個人的におすすめは、初代編集者・鈴木真弓の語る、三十年史。もともと講談社ホワイトハート文庫から刊行された『十二国記』が、どのように生まれ、どのように育っていったのか。その後、新潮文庫から完全版が刊行されるに至り、自身も新潮社に移った彼女は、『十二国記』をいちばん近くで見守ってきた人物である。伴走してきたその道のりを読むだけで、胸が詰まる。『十二国記』のはじまりである新潮社文庫『魔性の子』の担当編集者だった大森望の寄稿とあわせて、ぜひじっくり読んでいただきたい。

西尾維新『怪盗フラヌールの巡回』 (講談社) 

 やはり周年記念で刊行されたのは、5位の西尾維新『怪盗フラヌールの巡回』。デビュー20周年を迎える西尾維新が新たにはじめたシリーズの第一作目である。大怪盗だった父親の跡を継いで、二代目怪盗フラヌールを襲名した主人公の「ぼく」。どんな場所にだって忍び込む彼の目的は、盗むことではなく、お宝を正しい持ち主のもとに返却すること。西尾維新らしい個性的なキャラクターがわんさか登場し、かつ、ミステリーの読みごたえもたっぷりな新機軸。西尾維新書きおろしの脚本に、声優・梶裕貴が声優をつとめた20周年記念PVも、すでに80万回再生を突破したという。

 何年経っても、何作重ねても、読者を飽きさせることのない人気作家たちの、底力が垣間見える作品が並んだ今月。まだまだ、未来の楽しみは尽きそうにない。

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