『歩くひと』『今日のさんぽんた』『ぐるぐるてくてく』……読んでいるだけで心和む散歩マンガ3選

散歩が題材の漫画3選

『ぐるぐるてくてく』

 東京都の都市近郊を歩く高校生の姿を描いた『ぐるぐるてくてく』。本作の中心人物である女子生徒・相生葵と小路歩は「散歩部」に所属する高校生であり、彼女たちは部活動として散歩を楽しむ。

 物語序盤において、歩は散歩よりも部室でゲームをしていたいという心情を抱くことが多い。ただ部長の相生がまるでRPGゲームに出てきそうな浮世離れしたスポットに案内することによって、歩は街並みを歩くことに魅力を覚えるようになる。相生が案内するスポットの数々は現実に存在するものがほとんどであるため、聖地巡礼として歩たちの巡った散歩ルートを楽しむことができることも本作の魅力のひとつだ。

 そんな本作では散歩の最中に相生が迷子となってしまう様子が描かれるエピソードが多い。現在地がすぐにわかるスマートフォンではなく、紙の地図を用いて散歩をする相生。迷子になってしまう原因であるとも考えられる紙の地図へのこだわりを訪ねる歩に対し、愛生は「カッコ悪い散歩は楽しいもん」と口にした。

 また訪れた土地のグルメに舌鼓を打つ姿も描かれており、エピソード「ふくろう探してぐるぐる」においては街中にいるフクロウを探すなか、フクロウの形をしたモナカをふたりで食べた。求肥の入ったモナカを食べ、笑みを浮かべながら「またフクロウ散歩しましょう」と話す歩に対し、相生は「最中と散歩/どっちが目的かなあ」と言葉を返した。

 本作で描かれる散歩の多くは目的地が設定されているものの、ときに迷子になったり、寄り道をしたりする。本作における散歩は効率的に目的地へたどり着くことだけでなく、散歩をすることそのものも目的となりうるのであろう。目的が多岐にわたり、一概に語ることのできない散歩の奥深さを『ぐるぐるてくてく』は示しているのだと感じる。

 

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