女の園の星、スポットライト、A子さんの恋人……ユニークな背景画に注目したい漫画3選
『A子さんの恋人』
大学時代の同級生とアメリカへ留学した際に出会った男性、ふたりの人物から思いを寄せられるも明確な答えが出せない優柔不断なA子の姿を描いた『A子さんの恋人』。本作の作者・近藤聡乃氏はアニメーションやドローイングといった作品を国内外で発表している人物だ。『スポットライト』ではベタやトーンによりリアルな背景が表現されていたが、本作で描かれる背景は描線と最小限のベタによって構築され、影となる部分は多くは1本1本の線の集合体で表現される。
そんな背景からはシンプルな印象を受けるものの、物語を読み進めるなかで違和感を覚えないほど自然な風景として感じることができる。ただ背景に目を凝らすとシンプルであるがゆえに、1本1本の勢いや正確さなど描線に込められた情報量を感じることもできるのである。
洗練された描線で構築される物語の舞台・阿佐ヶ谷の風景。シンプルでありつつも情報量を感じる本作の背景描写は、多くの漫画作品で描かれる秀逸な背景が人の手とペンによって描かれているというあたりまえの事実を浮かび上がらせる。