『海街diary』『ブランチライン』『三拍子の娘』……魅力的な“姉妹”が心を揺さぶる家族の物語

“姉妹”が魅力的な家族の物語

 2022年の春は、アニメ化を果たしたスパイ漫画『SPY×FAMILY』が大きな話題を呼んだ。超能力少女・アーニャの可愛らしさや、迫力のあるアクションシーンが魅力的な本作において、「フォージャー家」という疑似家族として暮らす、凄腕スパイ・ロイド(黄昏)や殺し屋・ヨルたちの姿や葛藤から、家族の在り方について考えた人は多いのではないだろうか。

 家族をテーマにした漫画作品は多く、多様な在り方が描かれてきた。そのなかで今回は、アーニャやヨルに負けない、それぞれに魅力的な女性たちがひとつ屋根の下でドラマを織り上げていく作品をピックアップしてみた。

『海街diary』

 2015年に実写映画化された『海街diary』は、中学生の女の子・すずが義理の姉にあたる3人の女性たちと共に鎌倉で暮らす様子を描いた作品だ。

 自分たちの父親の葬式に参加する親族として、3人姉妹とすずは初めて顔を合わせた。長女・幸はあまりにも子どもらしくないすずの姿を目にし、鎌倉で共に暮らすことを勧める。父親の四十九日が済んでから、すずは3人の姉の元へ引っ越し鎌倉での日々を過ごすことに。

 これまで我慢をしながら過ごしてきたすずは、3人の姉たちと暮らすなかで一緒に涙を流し、姉妹の恋模様や心情を知り、喧嘩をしたり、ときに自身の存在に負い目を感じながら中学時代を過ごす。

 鎌倉に引っ越してくる前のすずは、両親とごはんを食べているときでさえいつもひとりだと感じていた。そんな彼女が物語の終盤に「ひとりでごはん食べることが多くなったけど/全然さびしくないの」と話すようになる。

 子どもらしくない様子を感じさせていたすずは、3人の姉と過ごすなかで喜怒哀楽に満ちた表情を見せていく。作中で幸がすずの姿を目にして「すずの時計の針は少しずつ動きはじめているんだ」と思ったように、誰かと過ごす日々はひとりでいるときとは異なる変化や成長を生むのであろう。この辺りは、孤児院でひとり過ごしてきたアーニャが、家族を得て変化していく様子と重なる部分もあるかもしれない。

『ブランチライン』

 『海街diary』では4人が姉妹として過ごす日々が描かれるが、『ブランチライン』においても4人姉妹が家族として過ごす様子が描かれる。アパレル通販会社で働く四女・仁衣と、喫茶店を営む三女・茉子。公務員として働く次女・太重と、シングルマザーとして過ごしてきた長女・イチ。彼女たちの母親も含め、職業も性格も異なる家族・八条寺家の姿が描かれる。

 そんな彼女たちをつないでいるのはイチの息子である大学生・岳の存在だ。岳が幼いころに父親がイチの元から離れたこともあり、八条寺家の姉妹や(岳にとっては祖母にあたる)イチの母親は宝物のように岳と接してきた。そんな岳が「さびしかったことは一度もないなー」と話す姿は、『海街dialy』の幸たちと過ごすようになったすずと重なる。

 八条寺家にとって岳が宝物であると感じていることとは対照的に、姉妹はそれぞれに罪や後悔の念を抱いている。仁衣がこぼした「だから尚更/懸命に生きようと思うんだ」という台詞は八条寺家や本作のテーマを象徴するものであろう。罪や後悔を抱いているからこそ、懸命に生きる八条寺家の女性たちが宝物として接してきた岳の姿は、誠実に生きた先にある未来を示しているようにも感じる。

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