『海街diary』『ブランチライン』『三拍子の娘』……魅力的な“姉妹”が心を揺さぶる家族の物語
『三拍子の娘』
4人姉妹が描かれる作品を挙げてきたが、『三拍子の娘』では3人姉妹が過ごす日常が描かれる。3人姉妹の母親が亡くなり四十九日が終わったころ、父親はピアノを弾きながら世界中を旅するため彼女たちの元から離れた。それから10年経った今も父は帰ってこないままであるが、ライターの仕事を務める「すみ」と営業職に就く「とら」、女子高生の「ふじ」の3人は同じ屋根の下で日々を過ごす。
失踪した父に恨みを抱く3人であるが、本作で描かれるのは「マルセイバターサンド」や「ミレービスケット」で大喜びするといった3人の些細な日常だ。ときに父に関連したエピソードが描かれるものの、3人の喜びに満ちた日常にまつわるエピソードは物語の大半を占める。
遠い過去に恨みや怒りを覚えつつも、些細な喜びを見つけ、ワルツのように優雅に、しなやかに暮らす3人。彼女たちの姿は良いことばかりではない現実を生きるロールモデルにもなるはず。何よりも楽しそうなすみととら、ふじを見ていると愉快な感情が湧き出てくると感じる。
本稿で挙げた作品のほか、両親を亡くした少女と叔母の暮らしを描いた『違国日記』や、5人姉妹が登場する『五等分の花嫁』なども、それぞれの登場人物たちに別の輝きが感じられる人気作だ。それぞれに異なる“家族としての関係性”にも注意して読んでみると、あらためて物語の魅力に気付かされるかもしれない。