orange、ちはやふる、GLITCH……“転校生”が深い印象を残す漫画といえば?
『GLITCH - グリッチ -』
これまで学校のなかでの転校生の心情を想像してきたが、『GLITCH - グリッチ -』は遠くの町へ引っ越してきた子どもが学校の外で抱く心情を映しているかのように感じられる作品だ。
10代の姉妹・ミナトとアキラが引っ越してきた桃迦町では、ときに建物よりも大きくなる奇妙な“影”が発生する。ミナトたちは桃迦町特有の異常現象の正体を知るため、現地で出会った友人と共に町を調査するようになる。
桃迦町は登場人物のセリフから“トウキョウ”が身近な土地として存在する都市であることがわかっており、おそらく現実の日本に存在する町に近しい土地であろう。ただ奇妙な“影”のほか明らかに一般的な人間とかけ離れた用紙をした人物や生き物が共存している町であり、ミナトたちの友人には肌が褐色の子もいれば、母に“彼女”がいる家庭をもつ子も登場する。町の地名を表す看板が複数の言語で記されている点も踏まえ、多様な文化が共存している場所として桃迦町が描かれている。
引っ越してきたばかりのミナトたちは自身が親しんできたものと異なる桃迦町の様々な文化に驚きの表情を見せる。ただ桃迦町のような都市でなくとも、引っ越しによって訪れた土地は田舎や都会といったカテゴリーに関係なく、まるで桃迦町のように子どもたちにとって新鮮で、不思議にあふれた世界なのではないだろうか。そんな転校生にしか体験できない景色を本作は映しているのかもしれない。
本稿で挙げた作品のほかに、『炎の転校生』や『聲の形』など転校生の姿が描かれる作品は多い。もしもこの夏に転校する人物が身近にいたら、もしも過去に転校してきたクラスメイトがいたら、これらの作品を読むことで彼ら彼女らの心情を垣間見ることができるかもしれない。