海街diary、水は海に向かって流れる、うみべの女の子……夏に読みたい「海」が舞台の漫画たち

海が舞台になった漫画たち

『うみべの女の子』

 漫画家・浅野いにお氏が手掛けた『うみべの女の子』。最終巻が発売されたのは2013年であるが浅野氏のファンを中心に愛され続けた作品であり、2021年には実写映画化を果たしている。

 海の近くにある小さな町で暮らす中学生・佐藤小梅は、好意を抱く先輩にフラれてしまう。小梅は心の傷を癒すため同級生・磯部恵介と肉体関係をもつこととなる。性行為によってふたりはお互いの喪失感を埋めようとするものの、物語が展開するなかで少しずつ心がすれ違っていく。

 海の描写が多く登場する本作において、小梅と磯部が海に向かって大声を上げるシーンが描かれる。ただ、ふたりは一緒に大声を上げたのではなく、ひとりで海を訪れ叫んでいるのだ。

 小梅が叫んだのは台風が接近し暴風雨が吹き付ける海、磯部が叫んだのは静寂な夜の海。対照的な状況の海に向かって大声を上げるふたりであるが、目の前から姿を消した人物に思いを抱きながら叫んでいるという点においては共通している。

 水平線の向こうには大陸が広がっているものの、本作でふたりが向く海は大海原が永遠と広がる。水平線の先にある存在を感じることのできない海は、ふたりが感じた孤独感や絶望を表しているかのようだ。まだどこかにいるかもしれないという希望と混じった、目の前に広がる大きな絶望を『うみべの女の子』の海は映していたのかもしれない。

 本稿で挙げた作品の他に、2022年春季よりアニメが放送されている『サマータイムレンダ』、「このマンガがすごい!2022」オンナ編第1位に選ばれた『海が走るエンドロール』なども挙げられるだろう。それぞれの漫画作品が映した海に想いを馳せ、夏を過ごしてみるのもいいかもしれない。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる