映像を補完、アニメファンを仰天、乱歩賞作家がファン魂を炸裂……「ガンダム小説」はアニメと並ぶ柱だ
ガンダムシリーズで小説というと、福井晴敏による『機動戦士ガンダムUC』についても触れざるを得ない。『逆襲のシャア』から3年後、『閃光のハサウェイ』よりは前となる時期を舞台に、ミステリーやサスペンスの分野で活躍していた福井が、新たなガンダムを書き下ろした。
実はこれよりも前の2000年に、福井は『ターンエーガンダム』(角川春樹事務所、後に『ターンAガンダム 月に繭 地には果実』に改題し講談社から刊行)という小説を書いている。小学生の頃からガンダムのファンだったという福井は、江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作『Twelve Y.O.』を富野に献本。この時に出来た伝手から、富野から『ターンエーガンダム』のノベライズを書くよう言われ、デビュー1年目で断れるはずがないと執筆したという。
その後、ガンダムを書く話が出てきて、TVシリーズや映画で見てきた宇宙世紀の続きを見せたいと筆を執って書いたのが『機動戦士ガンダムUC』。当時の世界は国どうしの戦争からテロを相手にした戦いへと移っていて、世代間の相克というのも問題になっていた。それをガンダムの世界を使い、規模を大きくして表現しようとして描いたものどのこと。小説はヒットしアニメにもなり、お台場にユニコーンガンダムの実寸大立像が建つまでになった。
好きだと訴え続ければいつかガンダムを書けるかも知れない。福井の成功が他の小説家を刺激して、新たな小説版ガンダムが生まれるきっかけを作ったかもしれないが、今や世界に広がるファンを前に、福井ほどの自信を持ってガンダムの世界に触れられるかは難しいところ。それだけの胆力を元に生まれた小説なら、きっと面白いに違いない。