『鎌倉殿の13人』八重の謎や今後の展開も…最新の歴史書読み比べ 研究者の相違が拡げてくれる中世への新たな視点

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の放映を受けるかたちで、ドラマの主人公である北条義時や、彼が執権を務めた鎌倉幕府に関する本が数多く書店に並んでいる。それらの中には、中世を専門とする歴史研究者が、最新の歴史学の知見を盛り込みつつ、その時代に詳しくない一般の読者にもわかりやすいように説明したものがあり、ドラマの副読本としてこの上なくありがたい著作となっている。
この書評では、ここ一年ほどのあいだに刊行された研究書の中から私の独断で、充実した内容と読みやすさとを兼ね備えたものを数冊紹介する。『鎌倉殿の13人』を観る際に、副読本として役立てていただければ幸いである。

この本では当時の身分制度を説明する言葉として、位階で三位以上の「公卿身分」、四位〜五位の「諸大夫身分」、六位以下の「侍身分」という三つの身分が出てくる。この身分制度を補助線とすることで、当時の錯綜した人間関係がかなりクリアに見通せるようになるのである。また、鎌倉幕府の棟梁である「鎌倉殿」と、「征夷大将軍」という官職とは必ずしも一致せず、将軍不在の時期が案外多かったというのも「言われてみれば」という感じだが、北条氏の内紛である「牧氏事件」や「伊賀氏事件」を、その鎌倉殿に誰を推すかという争いとして読み解いたあたりがユニークだ。個人的には、何か事件やトラブルがあるたびに名前が出てくる三浦義村の食えない動きが興味深かった。

この本では、頼朝死後に相次いだ有力御家人の粛清について、北条氏の主導性のみに目を向けてきた従来の見解は一面的であるとし、特に北条氏がまだ権力基盤を確立していない二代将軍・頼家の治世にあっては、比企能員が一連の事件で果たした役割を重視している。そこから浮上するのは、武装もせずにうかうかと敵地に乗り込んで討たれた凡将という従来の能員のイメージではなく、自分の手を汚さず政敵を次々と葬ってゆく恐ろしい陰謀家の姿である(そういえば『鎌倉殿の13人』でも、佐藤二朗が演じる能員が、次第に野心家としての側面を見せはじめている)。
また、義時に対する後世の評価の変遷がまとめられているのも役に立つ(意外なところでは、日蓮や勝海舟が義時を高く評価しているという)。なお、この本では限定された記述にとどめられている義時の姉・政子の役割については、同じ著者の『史伝 北条政子 鎌倉幕府を導いた尼将軍』(NHK出版新書)を併せて読んでいただきたい。