『カイジ』シリーズの盛り上がりは彼らのおかげ? 人間味のある“小物クズ”たちを考察

地上に上がっても搾取される「三好」

 お次は「第3章:欲望の沼」に登場した三好。「地下チンチロ」では、三好が毎回サイコロの出目をメモしていたおかげで、班長のイカサマを見破ることができた。その後、三好を始めとした45組の協力もあって外出券を手にして、カイジと地上で再会するシーンは感動だった。

 そんな戦友とも呼べる三好は同じく45組の前田とともに、「第4章:渇望の血」で再び登場。三好らは彼ら自身が地下で強制労働させられるきっかけとなった、金儲けのために手段を選ばない「帝愛グループ」系列の裏カジノで働いており「社長(村岡)があくどいヤツだからギャンブルで負かしてほしい」とカイジに懇願する。しかし実際は、カイジが超高レートパチンコの「沼」で得たお金を45組に分配せず、その大半を独り占めしている……と村岡からけしかけられ、カイジの味方のフリをしてカイジをハメる算段を整えていたのだ。

 そもそも、せっかく地下施設から脱出したにもかかわらず、裏カジノ、しかも帝愛グループ系列の店舗で働いているあたり閉口してしまう。これでは「地下施設に戻りたい」と言っているようなもの。

 また、仮に村岡が言う通り、カイジが「沼」で得たお金を彼らに分けなかったとして、それは不当と言えるだろうか。もちろん、村岡の巧みな話術に洗脳されてしまった部分もあるが、目の前の利益に目が眩み、小さな欲にとらわれて「恩を仇で返す」を地で行ってしまうあたり、やはり“小物クズ”である。カイジは「沼」攻略のため、爪の間に針を刺す“血のマニキュア”という想像を絶する拷問を受けている。その覚悟や努力を知っている読者としては、三好らの謀反には腹立たしくもあり、「地上に出てもこういう生き方しかできないのか……」と悲しい気持ちにもなった。

 このように『カイジ』シリーズはギャンブルだけでなく、人間の本質を暴くような描写も散見され、そうしたドラマが長年愛されている要因なのだろう。大金がかかった大勝負の行方も気になるが、その周りでうごめく“小物”たちの挙動こそ、本作の見どころと言えるかもしれない。

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