高田純次がいま振り返る、悩み多き半生 「ストレスを解消するには面白いことを探すしかないね」

高田純次が語る、ストレス解消法

――本の中で、キツかった仕事として活魚トラックに入ったお話をされていましたが、どういう経緯で入ることになったんですか。  

高田:最初はゴルフバッグに入って、スタジオに届けられるという企画だったんだよ。まあやるかと思ってたんだけど、当日になったら「生身の人間を宅急便で送るのは違法だ」とわかって。「残念だけどそうですか」なんて言ってたら、「実は活魚料理のトラックを用意しているんで、その中に入ってもらって、繁華街で覗き窓から顔を出してもらっていいですか」って言われたんだよ。しかもスーツ着てね。  

 新宿、渋谷、銀座と行くたびに水槽に潜って顔を出すんだけど、ほとんど誰も気づかなかったんじゃないかな。しかも冬だから水が冷た過ぎて。でも企画に穴を空けるわけにいかないから、やるしかないでしょって感じだった。やっぱり寒さっていうのはきついよね。あとは裸でタキシードか。ほっそい下着だけ着て、ボディーペインティングでタキシードを描いて、バッグを持って原宿の街を歩くっていう。ペインティングしてても、裸だから寒いんだよ。  

――そういうきついお仕事は、どうやって乗り越えられたんですか。  

高田:いや、乗り越えたってことはないんだけどね。もう本当にとにかく、やるっきゃないっていうのはあったよね。俺は日曜ゴールデンの『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(1985〜96年)でなんとか一般的に知られるようになったんだけど、俺と兵藤ゆきはギャラが少なくて。土曜と日曜で3本ロケして、全部キャラクターを変えなきゃいけないの。そういうのはだいたい「撮って逃げる」みたいな感じでやりっぱなしだからいいんだけどさ、月曜日にそのVTRをほかの出演者と一緒にスタジオで見る。ジャッジされるみたいな感じ。しかも編集するのは自分じゃないから、編集する人によって切り取り方も変わったりするでしょ。それでとにかく「ミスできない」みたいな感じが毎週あって、それはちょっときつかったね。 

一番困る番組ロケとは?

――本の中で、「お笑いとは裏切りである」という言葉が印象に残ったんですが、なんだか深いなと。  

高田:マジックもそうだと思うんだけど、1回見ちゃうともう面白くなくなる。「こういうことするんだろうな」っていうのを裏切っていかないといけないのはあるね。僕はアングラ劇団出身で、一般的にコントとかお笑い、芸能をやってる人たちとまた違うから。基本を知らないっていう言い方はおかしいかもしれないけど、わかんないってのもあるよね。  

 コントとかギャグを持ってる人だと「こうすれば笑いが取れる」みたいなのってあるんだろうけど、俺なんかどうやったら笑いが取れるかわからないから、すぐ裸になっちゃう(笑)。本当に、ネタがないのよ。だから「高田さん、講演で1時間話してください」とか言われてもできないし、「何すればいいの?」ってなっちゃう。こういう取材では、本のことに関してっていうテーマがあるからそれで話せるけど、「お客さん来てるから30分話して」みたいな仕事は来ないし、できないんだよね。  

――誰かがいて、振ってくれてその場で対処していくみたいな笑いというか。  

高田:そうだね。一番困るのが、人の多いところにロケ行って「ちょっと面白いやつ見つけてきましょう」みたいなの。ディレクターは今までの番組を見てるから、すぐに面白いやつがいると思うでしょ。実際はいないからさ(笑)。面白そうだと思って当たりをつけていったら、あんまり面白くなかったりとか。別に面白くなさそうだなって思ってたやつが、逆に面白かったりね。こりゃわかんないのよ。「すごい太ってる人見つけよう」とか「背の高いやつ見つけよう」みたいな、目標を与えてくれないと動けないんだよね。  

 ネタ持ってる人はネタをきっかけに話せるでしょ。特にコンビだと、1人がもう1人のフォローをしてくれる。俺の場合はフォローしてくれる人もいないから、自分で全てリカバリーするしかないんだけど、そのあたりが年取ってくるとどんどん鈍ってくるんだよ。そのギャップがあるよね。 


――お話を伺ったり、本を拝読すると、高田さんは全然「適当」ではなくて、すごく色々考えた上でお話、行動されているのかなという印象を受けるのですが。  

高田:そうね、朝はちゃんと目覚ましで起きるし、飯だってちゃんと食うからね。そういうところは適当じゃないのかな。適当じゃないところがわかんないし、適当もちょっとわかんなくなってきてるよね。例えば風呂を頭から入ってみるとか、トンカツ屋さんに行ってカツだけ残して衣だけ食べてくるとか、そういうのが適当なのかな? ハハハ! 最近はもう、コンビニ行って何か物買ったらお金払わなきゃって、それだけが頭にあるよね。  

 あとはなんとなく普通にしてると、「真面目だ」って思われるのも嫌だしね。ただ黙ってるだけなのに「どうしました、気分悪いんですか」とか「なんか面白いこと言ってくださいよ」とか言われるとそれもね、困っちゃうのよね。一つインパクトあるネタ持ってりゃさ、なんとかなると思うんだけど、そういうのを作ろうと思っても意外とできないんだよね。立場が中途半端だから、難しいなって思うよ。

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