最高のバディもの? 『ショーハショーテン!』から『恋はネタ作りの後で』まで、お笑いコンビを描いた漫画が熱い
「お笑い」をテーマにした漫画が活況だ。霜降り明星や3時のヒロインら“第七世代”の躍進も引き続き目覚ましいなかで、昨年末には「M-1グランプリ」で錦鯉が史上最年長優勝を果たしたことが話題になり、お笑いは年代を超えて、今や日本のポップカルチャーを語る上で絶対に外せないものになっている。お笑いがテーマの漫画作品と言えば、クラシックとして『べしゃり暮らし』(森田まさのり)が思い出されるが、近年では物語のバリエーションも増えており、お笑いファンを唸らせている。本稿では、まさにお笑い漫画シーンの“第七世代”のような作品を3作ピックアップし、紹介したい。
『ショーハショーテン!』
「ジャンプSQ」で連載中の話題作が『ショーハショーテン!』。原作は小説家の浅倉秋成、作画は『DEATH NOTE』『バクマン。』の小畑健だ。
抜群のお笑いセンスでテレビ、ラジオの投稿コーナーに何度となく採用されているものの、極度のあがり症で舞台に上がることができない四十万畦道と、ネタは作れないが元天才子役で舞台度胸が抜群の東片太陽。対照的な2人が文化祭のお笑いステージをキッカケにコンビを組み、日本一のお笑いを目指す青春サクセスストーリーだ。
小畑健のリアルとデフォルメを行き来する絵柄と、『バクマン。』を彷彿とさせる高校生バディものが印象的で、漫画としての質が高い本作だが、なによりその魅力は「ウケる」「ウケない」の理由に明確なロジックがある部分だろう。例えば第2話の「笑いと射程」で2人は笑わせるターゲットを絞り、そのターゲットに合った濃度の高いネタを作る。第3話の「笑いと敗北宣言」では、笑うという行為を一種の敗北宣言だとし、好意を持たれていない相手を笑わせることがいかに難しいかを2人が知ることとなる。熱量やセンスだけでなく、論理的思考があることが、2人が笑いをとることに説得力を与えているのだ。笑いの構造を理解したい人にもおすすめできる作品といえる。既刊1巻。
『かけあうつきひ』
「少年サンデー」で連載中の『かけあうつきひ』。作者は『すうの空気攻略』の福井セイだ。
漫才師を目指してお笑い養成所に通うツッコミ担当の上狛陽と、ボケ担当の有戸月。陽と月の小気味よいテンポが心地よい日常のやりとりは漫才そのもの。ふたりが小さなアパートで共同生活をしながら、いつか立つ大きな舞台を夢見てゆるやかで笑いの絶えない日常を過ごす様が描かれる。
お笑い芸人の多くが、養成所での日々や売れない若手時代という、いわゆる下積みを経験している。テレビやラジオで、売れっ子芸人が下積み時代の苦労話を披露する姿を見たことがあるだろう。笑いと哀愁に満ちた鉄板エピソードの数々。まさにそれが生まれる、お笑いコンビの下積み時代を描いたのがこの『かけあうつきひ』なのだ。六畳一間の風呂なしアパート、残りの食費は300円、常に財布の中身は寂しく、家賃の支払いも遅れている。
それでも陽と月の姿からは決して辛さを感じず、むしろ楽しそうに日々を送っている。現実はもっと悲惨だ!という芸人もいるかもしれないが、ふたりの笑いの絶えない日々に思わず心があたたかくなり、「人を笑わせる」という誇り高い仕事を志す人々にリスペクトの気持ちも湧いてくる。既刊3巻。