平野レミが語り尽くす、料理と音楽 「両方とも、気持ちを込めると上手にできるのよ」

平野レミが語る子育てと料理、音楽

クリエイティブな料理の背景には?

――料理を失敗することについても書いていました。

レミ:それはあったわよ。横尾忠則さんが、和田さんと仲良くて。まだ新婚の頃にうちにきたのよ。横尾さんは甘いものが好きだって言うから、お汁粉をつくったのよ。小豆を一晩水につけて柔らかくしてから、大鍋でコトコト何時間も煮ていたの。そしたら最後の最後で、砂糖と間違えて塩を入れ物をひっくり返して全部入れちゃったのよ。塩と砂糖が同じ入れ物だったから大失敗しちゃってさ。砂糖と塩は絶対入れ物は別にしたほうがいいわね。でもみんな一回失敗したらね、犬も猫もそうだけど、絶対二度と同じことはやらないでしょ。私も砂糖と塩の区別は、もう絶対平気。だから、みんな一回大失敗するといいのよね。

――レミさんの料理はクリエイティブですが、アイデアはどのように思い浮かびますか?

レミ:「こんなもの食べたいな」って思うことかな。私、肉料理が好きなの。ちょっと試しにやってみるのよ。一回失敗すると、次は失敗しないからね。そしたらだんだん調子良くなっちゃってさ、スパイスとか調味料も少しずつ足していくのね。そうすると失敗しないしね。

 海外旅行から帰ってきたときは「よしこれつくろう!」と思ってさ。ベロが忘れないうちにね。日本の料理は大抵醤油とみりんと砂糖で大体わかっちゃってるけど、海外の料理ってすごくおもしろいよねえ。

――どういう料理なんですか?

レミ:いろんな料理よ。昔、和田さんと中国の桂林に行ったの。そこで「トゥクパ」っていうチベット料理があって。うどんみたいな麺料理なんだけど、つゆにヨーグルトが入ってるの。そんなのちょっとないでしょう? 他にはトマト、玉ねぎ、人参に、クミンパウダーも少し入っててさ。ちょっとゲテモノみたいだけど、食べてみると「あ、おいしい!」みたいな料理、そういうのつくるの好きね。

 でもテレビでそんなんばっかりやってると嫌われちゃうからさ。普通の日本の料理もやるけどね。私は不精で気短だから、あんまり面倒くさいことは嫌いね。パパッとできて、ゴックンしたらおいしい料理を狙ってるの。

――つくる過程を気にしなくても、食べた時に帳尻が合えばいいんですね。

レミ:そうよ、それでいいのよ。焼いた魚は普通皿の上に寝っ転がってるでしょう。たまには魚だって立たせてやったら、喜ぶんじゃないかと思って。それででっかい大根を半分に切って。魚の尻尾のほうから菜箸をググググって入れて、大根の上に魚を直立にブスっと刺すのよ。焼いたあとに、おいしいあんをダラダラっとかけるの。ブラジル料理のシュラスコみたいな感じに切って食べるのよ。

 だからみんなに「結婚式やお正月は、魚は寝っ転がさないで立たせなさいよ!」って言ってるの。立たせるとさ、テーブルが豪華に見えるの。ちょっとハハって笑えるような料理っていいじゃないよ? ね、楽しまなくちゃね。

――お二人の息子さんの妻・上野樹里さん、和田明日香さんとの「和田家の嫁姑鼎談」は、なんでも率直に話されていて楽しい雰囲気でした。

レミ:いつもあんな感じよ。あーちゃんも樹里ちゃんも、どっしりしてるからね。二人とも目がデカくて、背がデカくて、態度がデカくてさ。みんないいやつね、本当にいいやつ。

 私は息子しかいないから、娘がいたらこういう娘なのかなって感じでね。二人とも和田になっちゃったんだ。だから私が思うのは、洋服代も食費も学費も何も払わないで、大きくなってから、うちにポッとタダで来たのよ。だから大儲けよ。アハハハハ。一銭もかからずにね。ありがたいわね。

――お子さんから元気をもらうとも書いていました。

レミ:そうよね。子どもから元気もらってね。それはもちろん私が元気に育てたから、元気な子どもになったんだし。だから今は、恩返しされている感じよね。

写真=中西裕人

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