『3月のライオン』島田開は読者を勇気づける 飄々と、全身全霊を将棋にかける姿勢から学べること
続く『3月のライオン』4巻は、宗谷名人に挑む「獅子王戦」は島田の活躍のハイライトともいえる。
宗谷冬司はタイトル戦を独占勝利し、史上最年少の名人。そんな浮世離れした彼は島田と同い年だ。作中でのタイトル戦「獅子王戦」。桐山は島田の介抱をしながらその命を削るような戦いを間近で目にする。
恋人、祖父、父が島田の指す将棋を見て、プロじゃなくてもいいんだよ、と言ってくれる。そんな夢から覚めた島田は獅子王戦2日目に臨む。
笑えたのは
夢の中でも 将棋を指していた事
――それでも「棋士になりたかった」と
悔やんで やっぱり 胃を痛めていた事
このモノローグの後に島田は目を見開いて、現実と戦う。
どっちが
悪夢か
とことん
味わって
やろうじゃない
島田は胃を痛めながらも、精神力でコンディションを持ち上げていく。宗谷との「死闘」はまさしく生死を賭した戦いなのだ、と読者に一局の重みを感じさせたことだろう。
桐山は島田と宗谷の一戦を大盤解説した。島田の身近にいた桐山は、モノローグで語る。
倒れても
倒れても
飛び散った
自分の破片を
掻きあつめ
何度でも
立ち上がり
進む者の世界
終わりのない
彷徨
「ならば なぜ⁉」
――その答えは
決して
この横顔に問うてはならない
そして桐山は、棋士として戦い続けるために、自らに問い続けるのだ。
自分を追い込んで戦い、その背中で後進に大切なメッセージを伝えている島田開。その姿に勇気づけられる方も多いだろう。筆者もその一人だ。
そして、そんな島田だからこそ、川本3姉妹の長女・あかりをめぐる淡く、甘酸っぱい恋模様からも目が離せない。