なぜいま『赤ちゃんと僕』を読むべきか 「いろんな家庭」や「いろんな事情」を自分ごととして捉える契機に
いろんな家庭の事情が見えにくい世の中だから
コロナ禍となり、社会は「いろんな家庭の事情」を汲むことを求めてきた。しかし、具体的に「いろんな事情」を想像できる人は多くないのではないだろうか。筆者も経済格差などは思いついても、経済格差以外の、細かい事情を考えるところまではしなかった。知り合いの私生活を断片的な情報から想像することは失礼な気がするからだ。ところが、誰かを理解し納得するためには、その一歩踏み込んだ想像が求められる。
『赤ちゃんと僕』は、広範な中流家庭のあれこれを描いた漫画だ。決して一言でまとめられない複雑さが、そこにあることを教えてくれる。もちろん、漫画に描かれていることは、娯楽性を重視した上でのことだ。現実社会、特に今のような未曾有の時に当てはめて考えることはナンセンスかもしれない。
だが、外出する機会や、他の家庭との行き来が減り、視野が狭くなりがちな今、『赤ちゃんと僕』を読むことで、「いろんな家庭」や「いろんな事情」を自分ごととして考えられるようになるかもしれない。