主人公・茂野吾郎よりも過酷な人生? 『MAJOR』佐藤寿也が乗り越えてきた困難

自分から誘ったくせに転校する吾郎

 プロ野球選手になって、祖父母に楽をさせたい。その第一歩として、寿也は名門·海堂高校に経済的な負担なく通える「特待生」になることを目指していたが、同校のスカウトから、あろうことか吾郎と天秤にかけられることに。地区大会で吾郎と対戦することになった寿也は、負けた方が海堂高校への進学を諦める、という賭けを持ちかけるのだった。

 結果として負けた寿也は、海堂高校への思いを捨て、吾郎と共に“打倒海堂”を掲げる。そこで名門高校を倒すために共闘が始まる……ならまだよかったが、直後、県大会で海堂高校の附属中学校に“フルボッコ”にされた吾郎から、「やっぱり海堂高校に進学したい」「一緒に海堂に行こう」と手のひら返しを食らうことに。

 特待生になれなかった寿也にとって、ネックになるのは高額な授業料だ。祖父母に負担をかけたくないと、いったんは吾郎の誘いを断るが、祖母から「子供が親に自分の進みたい道ぐらいわがまま言わなくてどうするんだ」という趣旨の檄を受け、受験を決意する。

 過酷なセレクションを勝ち抜き、祖父母が保険や年金を解約してお金を捻出してくれて、無事に海堂高校に入学する寿也。特待生チームにも一泡吹かせ、吾郎とともに叩き上げのスター街道を突き進む……という筋書きなら、これもまだよかった。

 しかし、海堂高校の一軍に勝利した吾郎は、「眉村や寿也がいる海堂高校と戦いたい」と気が変わって、アッサリ転校。吾郎に誘われて祖父母も巻き込んで海堂高校に進学したのに、誘った側が身勝手な理由でいなくなるのだった。

 寮生活になじめず、才能はありながらも転校·退部する高校球児は少なくない。気心の知れたチームメイト、ルームメイトの存在は大きな支えになるところだが、自分を海堂高校に誘い、ここまで共闘してきた吾郎が、波風を立てるだけ立てていなくなってしまったことは、想像以上にしんどかったのではないか。

 このように、寿也の前には多くの壁が立ちはだかったが、妹の美穂と再会したことをきっかけに過去のトラウマとも向き合い、最終的には米メジャーリーグでセンセーショナルな活躍を見せるに至っている。困難の多いご時世、佐藤寿也というキャラクターの活躍から、勇気をもらうのもいいかもしれない。

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