『呪術廻戦』0巻ーー乙骨憂太の“先祖”が物語を動かす可能性 8つの仮説から考察

『呪術廻戦』菅原道真は物語に絡んでくるのか?

※本稿には、『呪術廻戦』(芥見下々)0巻およびシリーズ本編の内容について触れている箇所がございます。同作を未読の方はご注意ください。(筆者)

 現在公開中の映画、『劇場版 呪術廻戦 0』が話題を集めている。

 原作は、2017年、『東京都立呪術高等専門学校』のタイトルで、「週刊少年ジャンプ」増刊号(「ジャンプGIGA」)にて連載された、『呪術廻戦』本編の前日譚(全4話。2018年に単行本化された際に、『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』というタイトルに改名された)。

 なお、単行本に掲載されている芥見下々の「あとがき」によると、もともと作者としては、この物語の週刊連載化(長編化)は想定していなかったそうだが、いま改めて読み返してみると、(もちろん独立した全4話の物語としてもよくまとまっているのだが)後に始まった『呪術廻戦』本編につながる、謎や伏線がいくつも散りばめられていることに驚かされる。逆にいえば、それだけ限られたページの中に、さまざまなアイデア(いくらでも作品世界を広げられる、おもしろい漫画の“種”)が詰め込まれていた、という見方もできるだろう。

 そこで本稿では、その0巻に出てくる、いくつかの「謎や伏線」の中でも最も気になる――そして、もしかしたら今後のシリーズ本編の展開を大きく左右しかねない“ある人物”について、考えてみたいと思う。

物語を大きく動かす“ある人物”とは?

 繰り返しになるが、『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』は、『呪術廻戦』本編の前日譚である。主人公の名は、乙骨憂太。11歳で交通事故死し、「特級過呪怨霊」と化した幼なじみの少女・祈本里香に取り憑かれた少年だ(街ひとつ破壊しかねない恐ろしい“力”を持った祈本里香は、乙骨に危害を加えようとする相手を容赦なく痛めつける)。

 物語は、この乙骨が呪術高専に転入し、「呪術師だけの世界」を作ろうとする夏油傑との戦い(「百鬼夜行」事件)を経て、里香を「解呪」――ひとりの呪術師として大きく成長するまでが描かれる。

※再度注意。以下、いくつかのネタバレあり。

 ちなみにこの乙骨、物語の最後で、実は、里香に取り憑かれていたわけではなく、彼のほうから(無意識のうちに)彼女に呪いをかけていたのだということがわかる。さらには、彼が「日本三大怨霊の一人」にして「超大物呪術師」の子孫だったということも。

 そう、この、「日本三大怨霊の一人」にして「超大物呪術師」こそが、先ほど私が書いた、本稿で採り上げたい“ある人物”なのである。

 その人物の名は、菅原道真。平将門、崇徳天皇とともに日本三大怨霊の一人とされている平安時代の貴族だ。本来は学者・詩人である彼の華やかな政治活動(右大臣にまでのぼりつめる)は、敵を生むことにもなり、やがて失脚。太宰府の地に左遷された後、非業の死を遂げるが、彼の“祟り”としかいいようのない災厄が京で多発したため、“神”として祀られることに。

 なお、呪術高専の教師・五条悟もまた、その名字からもわかるように[注1]菅原道真の子孫という設定であり、つまり、乙骨と五条は、(遠縁の)親戚同士ということになる。

[注1]五条家の祖は菅原氏。

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