【漫画試し読み】『東京最低最悪最高!』鳥トマトが語る、"面白さ"のキモとは? 「人間は元々ヤバい人が大好き」
2023年9月に公開されるやいなや、SNSで瞬く間に拡散され100万PVを突破、賛否両論渦巻く大論争へと発展した読切『東京最低最悪最高!』(小学館)。読者の反響を受け、今年8月に満を持して「月刊!スピリッツ」にて連載化となった本作の単行本第1巻が2025年1月10日に発売される。
今回、著者である鳥トマト氏へインタビュー。作品のキャラ以上にユニークな作家性が見えてきた。インタビューに先立って、未読の方はぜひ1話を読んでみよう。(編集部)
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【1話試し読み】 超絶バズ&大論争を巻き起こした令和の鬼才・鳥トマトが贈る大問題作『東京最低最悪最高!』
ーー本作制作の経緯を教えてください。
鳥トマト(以下、鳥):知り合いに東京出身の男性で、地方都市の出身の女性と結婚した人がいて、「よく妻に『優しい』と言われるんです」と言っていたのを聞いてしまい、「それはきっと『優しい』んじゃなくて…きっと、その女性がお前に対してどういう感情を持っているかというと…」ということを説明したくて、描きました。
その男性が実際どうだったかは、他人なので知らないのですが、よく考えたら、こういう感じで結婚した女性が、こんな自らの不利益になるような自分の本心を夫に言う日は死ぬまで(あるいは死んでも)来ないですよね。なので、珍しい漫画になったんだろうな〜、と思います。
SNSで大論争 賛否両論あった理由
ーー2023年9月に読切が公開された際には、SNS中心に話題となり、賛否共に感想コメントが多数見られました。
鳥:自分としては「どこにでもある、よくある話だろうな」と思って描いたので、こんなにバズると思ってませんでした。今思うと、「どこにでもある、よくある話」だから逆にバズったんだと思うし、「どこにでもある、よくいる、普通の人」の話だから賛否両論になるんだと思います。普通の人も、思いっきり本音をぶちまけたら、意外と好かれたり、思いっきり嫌われたりしますよね。
読者の皆様(あるいはその配偶者の方)がお墓まで持っていくような気持ちを無理やり掘り起こして申し訳なかったな、という気持ちもありつつ、でも「知らないまま死ぬより良かったでしょ?」とも思ったり……。
キャラクターのリアリティは作者の「意地悪さ」が鍵?
ーー2024年8月に連載化した本作ですが、オムニバス連載という形式が取られています。毎話違うキャラクター・感情を描くことになると思うのですが、どのように作られているのでしょうか。
鳥:キャラクターは今までの人生で実際に出会った人たちをイメージして、感情はだいたい「自分だったらこんな時、どう思うかな〜」と思いながら描いています。たまにモノローグが意地悪すぎるとか言われるのですが、それは普通に僕が意地悪いからだと思います。意地悪さが原稿料に変わって良かったな〜と思います。
ーー「意地悪」と表現されましたが、本音が描かれているからこそ読者の感情も揺さぶられるのかもしれないですね。
漫画描く以外に、何の役にもたたないので……。物好きな読者様には本当に深く感謝しています。これからもよろしくお願いします本当に……。
ーーちなみにキャラクターを描く上で参考にしている・注目している人などはいるのでしょうか?
鳥:最近は「人格と行動に一貫性があるヤバい人」が好きです。「エンタメというのは思った以上に、作り手の人物像が透けちゃう」ということに気がついてしまったのですが、自分も面白い漫画を描きたいので、そのようになりたいと思っています。
ーー「一貫性」は一つキーワードになりそうですね。もう少し詳しくお伺いしても良いでしょうか。
鳥:最近美輪明宏さんの「紫の履歴書」を読んで、かっこいい〜と思いましたが、やっぱり、ご経験が鮮烈でかつ、生き方に一貫性があるからだと思いました。その後、三島由紀夫さんの本も読んで、まあ生き方にも本の内容にも賛否あるかと思いますが、人生に一貫性があるという点においては、すごくいいな、と思いました。逆に今、いくら成果が上がってても、あまり一貫性がない人は好きじゃないです。
結果的に、ナルシストっぽい人を好きになることが多いです。これはやっぱり強い一貫性があるからだと思います。我こそはナルシストだという人とはぜひお友達になりたいです。
他にも、注目している人はそこそこいるのですが、一貫性があるかどうかは基本その人がお亡くなりになるまでわからないので…お亡くなりになったら言えると思います。でも、みんな僕より長生きして欲しいから、言える日は来ないかも……。