BTS RMは読書から何を得ているのか? エッセイ『それぞれのうしろ姿』が気づかせる視点
BTSとして思うように活動ができないという焦りや葛藤。無慈悲に過ぎていく時間を前に、きっと虚しさを抱いていたに違いない。いまやグローバルグループとして、その一挙手一投足に注目が集まるBTSのリーダーという立場であれば、想像以上のプレッシャーとして大きくのしかかっていたのではないだろうか。
そんなRMの心情を察すると、本著が繰り返し語る視点の転換は、彼の心を少しだけ軽くしてくれたのではないだろうか。自分の意志ではどうしようもないことに対してフラットな心持ちでいること。まるで植物のようにじっと耐えることも悪いことではないという気づき。
世の中は、弾むボールのように思ったようには動いてくれないものなのだ。様々な偶然によって決められるがままに転がっていく。そんな世界を憂うばかりではなく、自分自身もボールや風のようにありのままに生きられたら……。
その心の持ちようは、新しい何かを生み出し続けるアーティストばかりではなく、この世界を構成する私たち1人ひとりの心も軽やかにしてくれるヒントをくれるものだ。
RMは、SNSやBTSの楽曲を通じて、いつも私たちに前向きになるきっかけを投げかけてくれる。そこに確かな説得力を感じられるのは、RM自身の心の動きや経験を経て手に入れた気づきばかりだからだ。
RMにとって読書は圧倒的なアウトプットを繰り返す日々における、欠かすことのできないインプットの時間。そして彼の中で凝縮されたエッセンスが、おすすめする本や、BTSの音楽に埋め込まれているのだろう。これからも彼が手に取る本に注目し、BTSの音楽と共に様々なメッセージを読み解くという楽しみを味わっていきたい。
■書籍情報
『それぞれのうしろ姿』
著者:アン・ギュチョル
翻訳:桑畑 優香
定価:1540円(10%税込み)
発売日:2021年11月22日頃
出版社:辰巳出版(&books)
©TATSUMI PUBLISHING 2021.
楽天ブックス:https://books.rakuten.co.jp/rb/16636895/