『鬼滅の刃』藤の花と青い彼岸花  ふたつの花が意味するものとは?

『鬼滅の刃』ふたつの花が意味するものとは?

現代に鬼が生まれる可能性

 ちなみに、「青い彼岸花の実在」については、最終話「幾星霜を煌めく命」の中でさりげなく描かれている。

 最終話では、物語の舞台は大正時代から(鬼が消滅した)現代に移されているのだが、主要キャラのひとり・嘴平伊之助の子孫とおぼしき青年(美女にしか見えない植物学者)が、珍しい青い彼岸花を発見したものの、「うっかりミスで」全部枯らしてしまったというニュースが世間を騒がせている。それによると、青い彼岸花は1年のうち2〜3日、しかも、昼間しか咲かないらしく、だとしたら、(支配した人間を使うでもしないかぎり)鬼たちが自力で探し出せるはずもなく、なんとも皮肉な“オチ”だという他ない。

 当然、伊之助の子孫(嘴平青葉)は、「各方面から非難轟々」らしいのだが、見方を変えれば、新たな鬼の誕生を人知れず未然に防いだともいえるわけで、(花を枯らした本人はもちろん、誰もわかってはくれないだろうが)これはどちらかといえば善行なのである。むしろ、気になるのは、青葉が枯らした花が本当に「全部」だったのだろうか、ということだ。確かに、『公式ファンブック』2巻にも、(青葉のミスにより)「青い彼岸花は絶滅したと思われる」という一文があるのだが、あくまでも「思われる」であり、「絶滅した」とまでは断言されていない。

 ならば、青い彼岸花はまだこの世のどこかに生息しており、それを原料とした薬を飲んだ鬼が再び誕生しないともいい切れないわけだが、それについてもまあ、とりあえずは「大丈夫」だと考えていいだろう。

 というのは、「炎の呼吸」を極めた「炎柱」を代々輩出してきた煉獄家では、いまでも厳しい剣の稽古に打ち込んでいる男子がいるようだし、竈門家でも、(家の壁に飾られている先祖たちの思い出の品々を見るかぎり)長男(あるいは次男?)に、「ヒノカミ神楽」は受け継がれているものと思われるからだ。さらには、「お館様」は日本最高齢記録を更新しながら健在であるし、珠世の遺志を受け継いだ愈史郎もひっそりと生きながらえている。

 そう――この先、万が一、再び鬼舞辻󠄀無惨のような恐ろしい鬼が誕生したとしても、それに抗うための人間の知識と技は、それなりに継承されているといっていいだろう。だからまあ、大丈夫、なのである。

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