さいとう・たかをさんが漫画界に遺したもの 最晩年に若者に向けて語ったメッセージから考える

さいとう・たかをが遺したメッセージ

若い世代の人たちに向けて遺したメッセージ

 さて、いささか唐突ではあるが、ここで、少しだけ個人的な話をすることをお許しいただきたい。というのは、先日、私が聞き手を務めた『コロナと漫画〜7人の漫画家が語るパンデミックと創作〜』というインタビュー集が発売されたのだが、同書には、さいとう・たかをも登場しているからだ。

 『コロナと漫画』は、その副題にもある通り、7人の漫画家たちに現在のパンデミックの状況と創作のあり方について語ってもらったものだが――7人中5人はフィジカル・ディスタンスに配慮しつつ対面で取材したのだが――さいとうについては、スタッフの協力のもと、メールでのやり取りを何度か行うことでテキストを完成させた。

 取材したのは今年の7月のことであったが、短いページ数ながら、巨匠が最晩年に遺した貴重な言葉の数々が収められているので、機会があればぜひ読んでいただきたいと思う(たとえば、私が先に書いたような、「プロ意識をもって劇画の仕事に向き合うこと」の重要性が繰り返し語られている)。

 なお、そのインタビューの最後で、さいとうは若い世代の人たちに向けて、こんなメッセージを遺している。それは、(要約すれば)「あなたたちと一緒に“コロナ後の世界”を見てみたい」というものであった。また、コロナ禍だからといって諦めることなく、いまできる範囲で構わないから、仕事や学業だけでなく、遊びにも励め、ともいっている。これは、どんな窮地に陥っても、常に活路を見いだそうとして奮闘するヒーローを描き続けた、彼ならではの言葉だともいえるだろう。

 「劇画」という表現を通じて、さまざまな道を切り開いてきた、さいとう・たかを先生のご冥福を、心からお祈りいたします。


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