読み終わったあとに少し前向きになれる漫画『セクシー田中さん』のススメ
「姉系プチコミック」(小学館)にて不定期連載されている『セクシー田中さん』。
アラフォー彼氏なし、友達なし、地味だがAI並みに仕事をする経理部の田中さん。以前は暗くて猫背だった彼女が次第に引き締まり、姿勢もきれいに……。その変化に気がついたのが同じ会社のOL・朱里。23歳婚活中、キラキラしていていつも笑顔の朱里は田中さんとは真逆だ。交わらないはずの2人。しかし、あるとき田中さんがベリーダンスをしている姿を見た朱里は、すっかりファンになり、田中さんの”おっかけ”と化す。
“大和撫子”との結婚を夢見る時代遅れの笙野や、田中さんがひそかに思いを寄せるペルシャ料理店「サバラン」のオーナー三好、朱里の腐れ縁の男・進吾など、田中さんを取り巻く人々の恋と人生を描く。
みんな「自分は大したことがない」と思い込んでいる
ベリーダンサーであることが朱里にバレた田中さんは大慌てだ。絶対に誰も言わないでくれ、と頼み込む。バレたら恥ずかしいからに決まっているというのだ。ベリーダンスの衣装は露出が多いので、朱里はわからなくもないと納得するが、「すっごいキレイだったのに」と素直に伝える。
ベリーダンスを踊っているときの田中さんは自信満々に見えるけれど、「私なんて」とどこかで思っている。笙野に「おばさん」と呼び止められても「まあいいけど 事実だし」とちょっと傷つきながらも認めてしまう。仲良くなろうとする朱里にも「私なんかにつきまとってもあなたが得られるモノなんて何もないと思います 時間のムダですよ」と言い放つ。
一方の朱里はモテる女性で、男性から言い寄られることも多い。でも、それは自分が“若い”からだと思っている。年を重ねるごとに、周りから人が減っていってやがて誰もいなくなるのだ、と。
2人とも、傍目からは自信があるように見えても、心のどこかで「自分なんて」と思っている。自分には価値がない、と思わされることが世の中には多すぎるのだ。自分なんて価値がないから、大切にされなくても仕方がないと思っているのかもしれない。でもこの作品は、決してそんなことはないと強く感じさせてくれる。
それぞれが少しずつ自信を取り戻すまで
朱里には田中さんがとてもステキな女性に見える。田中さんは自分でベリーダンスをすると決め、彼女の生活はすでにベリーダンス中心で回っている。会社で何があったとしても、田中さんには居場所がある。朱里にはそれが羨ましいのだ。
田中さんともっとお近づきになりたいからという理由から、朱里もベリーダンスのレッスンに通い始める。最初はあまりうまく踊ることができずに苦戦をするが、それでも楽しそうだ。
笙野もまたベリーダンスに使われる太鼓「ダラブッカ」を習い始める。こちらは田中さんに触発されてというより、嫌われた理由を探るためだ。人に影響されて、自分を変えるために努力する、と決める。これも成し遂げることができれば、自信につながる。
自信がなかった人たちが、田中さんの姿を見て変わっていく。その人に興味を持ち、その人と近づきたい、という気持ちの表れだ。恋とか愛ではなくても、誰かに好意を持つというのは自分を変えるパワーになる。