【連載:本と芸人】ラバーガールが語る、小説から受ける“刺激”と“絶望” 「創作者のすごさがわかってイヤになっちゃう」

「本と芸人」第4回:ラバーガール

本を読むのをやめた大水、本を読まない飛永、その理由は……

ラバーガール・大水洋介(撮影=藤本孝之)
大水洋介

――本は読むほうですか?

大水:以前は好きで、月に何冊も読んでました。けど、本を読むよりお酒を飲むほうが好きになっちゃったと言いますか。家で飲むのが習慣になってから、本を読んでも(酔ってるから)まったく覚えてなくて(笑)、これじゃ意味ないなと思ってやめちゃったんです。だから、今はあんまり読んでないですけど、桐野夏生さん、西加奈子さん、角田光代さんとか、人間くさい物語を描く作家さんがすごく好きですね。

飛永:僕は漫画を少し読むくらいです。小説はあんまり読まないのは、創作者のすごさがわかって(自分自身が)イヤになっちゃうからかもしれない。村田沙耶香さんの『コンビニ人間』が面白いと聞いたんで読み始めたんですけど、3ページめくったところで“たしかに面白い。けど、これ以上、自分に入れるのは刺激が強すぎるな”と思って読むのをやめちゃったんですよ。

大水:(笑)。

ラバーガール・飛永翼(撮影=藤本孝之)
飛永翼

飛永:よくないよね? 興味はすごくありますし、自分も書いてみたいなと思うんですけど、新しい表現を生み出してる物語や逆から読んだら違う意味になったりとある意味、芸人的な発想で書かれているすごい物語を読むと、太刀打ちできないなぁと思ってしまうんです。だから、読むとしてもハウツー本ですね。小説は……ファンタジーものもすっと(自分の中に)入ってこないですし、ヒューマンものは自分とあまり重ねたくないっていう気持ちがあるのかもしれない。僕、落ち込みやすくて、暗い作品を観たり読んだりすると暗くなっちゃうし、明るい作品も自分と比べて落ち込んでしまったりするので、あえて物語ものを避けてるのかもしれないですね。

――大水さんは小説を読まれますが、ご自身のコントとの創作においての関係性はいかがですか? いつも2人でネタを作られるんですよね。

大水:そうですね。僕はそこまで本から影響を受けることはないです。けど、ドラマは最近、自分も出るようになってしまったので、(ほかの人の)演技を見ちゃうようになりまして。だから、自分とはあまり関係がないように感じるドラマばっかり観てます。例えば、『孤独のグルメ』とか。

飛永:あぁ。松重さんの演技ってすごいよね?

大水:すごい。けど、すごすぎるから、“この演技、すげぇなぁ”って観なくていいっていうか。

――主題もグルメですし。

大水:そうなんです。テレ東のあの枠、大体、なんか食ってるドラマが好きですね。

今年の単独ライブの新ネタは変なものが多くなった

ラバーガール(撮影=藤本孝之)

——8月26日から28日まで3日間、5公演で約2年5カ月ぶりの単独ライブ『史上最高の夏!』についてもお伺いしたいんですけど、今回はどんな単独になりそうですか?

飛永:今回も新ネタをやります。コロナの影響もあってちょっと難しい世の中ですけど、みなさんに明るい気持ちになってもらえるものにしたいなということで、こういうタイトルにしたんです。でも、ネタを作る自分たちもダメージをくらってしまっているというか。

大水:明るくしようと思ってネタを考えた結果、変なネタが多くなりました(笑)。

飛永:ネタ作りも難しかったんですよ。事務所で練習したりもしますけど、2人の間に透明なアクリルパネルを置いた状態でやらなきゃいけないですし、普段なら喫茶店で何時間もかけて作れていたものが1時間半くらいで退店しないといけなかったりして。

——たしかに1年以上の大勢で遊びに行けなかったり、みんなとお酒を飲めなかったり、旅に出たりできてない状況は、ネタに大きな影響を及ぼしそうですね。

大水:そうなんです。しかも、ネタを作ったあとで“これ、下ネタが多いぞ?”って気づきまして。

飛永:あそこに行ったよ、こういう楽しいことがあったよっていうネタ作りのきっかけとなる話題があまりない中、2人で会話してると下ネタが多くなるという現象が起きました(笑)。

大水:で、ヤバイぞ、ヤバイぞって慌てて下ネタの部分をカットしましたね。

ラバーガール(撮影=藤本孝之)

飛永:あと、知らないうちにご時世を斬ってたりしてね? いつもはあまり時代性を出さないように、流行りものはあまり入れないように意識しながら(ネタを)作っていた気がするんですけど、今回は勝手に入ってきちゃってるんでしょうね。けどまぁ、今の状況を楽しむしかないですし、今しか観られないコントを楽しんでいただけたらなと。二度とやらないかもしれないので。

大水:逆に、今だからこそできる設定のネタもありますからね。その辺、あまり細かくは説明できないですけど、ぜひ劇場やオンラインで観ていただけると嬉しいですね。

——本多劇場という演劇の聖地で単独ができる楽しみもありますよね。

大水:いつか本多劇場で単独ができたらいいなとは、うっすら思ってたんです。今回は劇場の方からやりませんかと声をかけてもらって。こういう状況なので迷ったんですけど、そろそろ踏み出さなきゃいけないなと。いつも割と腰は重いほうなんですけど、いつも以上に重い腰をがんばって上げて開催しようと決めました。

飛永:昨年、コロナが蔓延した時期に新しくYouTubeチャンネルを始めたんです。定期的に更新していくと、“あれ、これで食っていけるぞ”みたいな気持ちも持ったんですけど、そもそもこれがやりたいことだったのか、これだけをやっていくのが面白いのかなって考えた時、舞台に出続けないと自分を見失うなと思ったんです。昨年はファンの方々とも会わないから、僕らのファンなんていないんじゃないかと思ったりもして。単独をやるって決まった時もチケットを買ってもらえるのかなっていう不安も大きかったんですけど、たくさんの方が買ってくれて嬉しかったですね。

——無観客などを経験すると、お客さんの大切さに改めて気づきますよね。

大水:2カ月くらい前、20組くらいの芸人が出る大きなライブに出たんです。そこで久しぶりに何百人ものお客さんが入っている中、ネタをやったんですけど、“あぁ、やっぱりこれって楽しいな。いいもんだな”と再確認して。その時、やっぱりライブを続けていきたいなと思いましたね。

飛永:お笑いって安心して観るものなんじゃないかっていう気持ちもあって、昨年は単独をやらなかったんです。今もそういう気持ちはありますけど、ライブでウケると舞台に立ったあとの数日間は明るくなるし、頭の回転もよくなるし、体調がよくなるんですよね。ライブに立ち続けると自分自身も明るくなって、新しく発信できるものも生まれてくるのかもしれない。そうやってライブに立ち続けるためにはちゃんとしたものをやらないといけないなと思ったことが、今回の単独にもつながっているような気がします。

——最終日のチケットは完売してますが、オンラインや劇場で多くの方に観ていただけるといいですね。

飛永:お客さんにどう受け取ってもらえるのか。反応がすごく楽しみです。

大水:今はネタを揃えて稽古をするのみの状態なんですけど、今すぐにでも舞台に立ちたいくらいです。多くの人に観ていただけたら嬉しいですね。

ライブ情報

『ラバーガールLIVE「史上最高の夏!」』
開催日時:8月26日(木)17時30分開場/18時開演
       27日(金)13時30分開場/14時開演
            17時30分開場/18時開演
       28日(土)11時30分開場/12時開演
            15時分開場/16時開演
※28日の16時からの公演はオンライン生配信あり
会場:本多劇場
劇場チケット:5000円(全席指定・税込)
配信チケット:2500円)同時生配信&アーカイブ1週間・税込)
劇場チケット取扱:イープラス(https://eplus.jp/rubbergirl/
       FANYチケット https://yoshimoto.funity.jp/r/rubbergirl/
配信チケット取扱:FANYチケット https://online-ticket.yoshimoto.co.jp/products/rubbergirl-0828-1600
そのほか、単独ライブについての詳細は、公式サイト(http://www.p-jinriki.com/news/2021/08/005502.php)をご覧ください。

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