『HUNTER×HUNTER』の"ラスボス”となるのは誰だ? 暗黒大陸編の伏線から考察
そしてゴンのもう1つの重要な特徴、それが「動物に好かれる」点である。読者であれば彼がキツネグマとさえ絆を結び、カイトを驚かせたシーンを覚えているだろう。クラピカ達が向かっている暗黒大陸には、数多くの強大な生物が蠢いている。ゴンの友、キリコなどの魔獣も、元は“外”を住処としていた生物だ。一行が無事暗黒大陸に上陸すれば、同じく『週刊少年ジャンプ』で連載した『トリコ』における「グルメ界編」のように、大陸での冒険が描かれると予想できる。そしてゴンはこの暗黒大陸に住う動物サイドとして、人間サイドと対立する存在になるのではないだろうか。
自らが生み出した主人公であるゴンを、「やべえやつ」だと語った冨樫義博。彼は「ジャンプ+」に掲載された対談にて、“キャラクターをコントロール出来ずストーリーが変わってしまうことがある”と話した。また「ジャンプGIGA」での対談で散見された次回作以降への想いからは、『HUNTER×HUNTER』の終幕が近いことも感じられる。最終章とも噂される「暗黒大陸編」にゴンが登場するのであれば、彼が動物や魔獣サイドに付く展開も十分あり得るだろう。
そしてもし上記した展開を辿るならば、重要になるのは“誰がゴンを止めるのか”になる。その役目に相応しい人物を考えると、やはり彼がハンターを志すきっかけとなったジンが1番最初に頭に浮かぶ。原作338話にてゴンに“外”の話をし、彼が興味を持つきっかけとなったジン。世界樹の上でジンはゴンに、「道草を楽しめ、ほしいものより大切なものがそっちにころがってる」とアドバイスをする。当時はピンときていなかったゴンだが、ここで言う彼にとっての“大切なもの”とは、紛れもなく「仲間」だろう。この言葉を伝えたジンが、“大切なもの”を見失ったゴンにその真価を拳で問う。つまり主人公であるゴン視点ではジンがラスボスとなり、物語上はゴンがラスボスとなる展開。それが「やべえやつ」を中心に描く、本作らしいラストなのかもしれない。
2018年11月より約2年8ヶ月もの間、沈黙を保ち続けている『HUNTER×HUNTER』。もちろん連載再開は待ち望まれるが、本作の楽しみ方は漫画を読むだけに止まらない。張り巡らされた伏線と睨み合いながら、考察に興じるのも本作の醍醐味なのだ。様々な激闘を描きながら、未だ結末の展開をベールに包む『HUNTER×HUNTER』。ぜひ夢と妄想に想いを馳せながら、様々な考察に勤しんでほしい。