南北朝時代を斬新な切り口で描く『逃げ上手の若君』 魅力は松井優征の前作『暗殺教室』に通ずる“成長”?

『逃げ若』、『暗殺教室』に通ずる“成長”

シリアス展開の中にある笑いと隙のないコマ

 第1話を読めばわかるのだが、凄惨なシーンが多い。戦の渦中の物語なのだから、仕方がないと言えるかもしれないが、ずっと読んでいると人によっては気持ちが落ち込んでいくことは間違いない。

 ただ、笑いが散りばめているおかげで、その空気が中和されているのは『暗殺教室』のころから変わらない。たまにツッコミ不在のボケを突っ込んでくるものだから、こちらの気も緩んでしまう。

 また、時代が時代だけに絵に情報量が多い。多くの武士が登場するシーンでは全員の着物の柄が違うだとか、背景の書き込みだとか……キャラクターそれぞれの目も印象的である。

 時宗の叔父で裏切者の五代院宗繁や信濃守護となり、諏訪氏と敵対する小笠原貞宗などそんなに「悪」らしい目があるものかと感心してしまう。時行ら子どもたちのかわいさに対し、武将たちの化け物じみた風貌よ……いや、当時の武将はみな化け物じみていたのかもしれない。時行がこれから現れる化け物たちとどのように渡り合っていくのか。8月には2巻が発売予定ということで、物語の続きが楽しみだ。

■書誌情報
『逃げ上手の若君』1巻(ジャンプコミックス)
著者:松井優征
出版社:集英社

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