新一×蘭だけじゃない! ラブコメとして楽しむ『名探偵コナン』

ラブコメとして楽しむ『名探偵コナン』

 推理漫画の金字塔として今もなお人気が止まらない『名探偵コナン』だが、作者の青山剛昌は『コナン』を「殺人ラブコメ」と称している。

“これもひとえにこの「殺人ラブコメ漫画」を見捨てずに読んでくださった読者の皆様のお陰です!” ーー『名探偵コナン』第49巻 巻末付録 完全キャラクターBookより引用

 作者がこう称しているだけあり、『コナン』はラブコメとしても十二分に魅力的な作品だ。今回は、作品内の何組かのカップルのラブストーリーを紹介しながら、ラブコメディとしての『名探偵コナン』について掘り下げてみようと思う。

工藤新一×毛利蘭

 まずは作品中で最も正統派なこのカップルから。新一と蘭の恋の行方は、『コナン』の大きな推進力になっていたが、蘭の新一に対する思いは第2話「小さくなった名探偵」から名言されていた。

“ちっちゃい頃からいじわるで…いつも自信たっぷりで…推理オタクだけど…いざと言うときに頼りになって…勇気があって…かっこよくて…わたし新一が…だーい好き♡”

 このセリフを新一が幼児化した姿であるコナンに対して、正体を知らぬ蘭が満面の笑顔で語りかける。実は2話の段階で(結果的にではあるものの)蘭は新一に告白をしていたのだ。

 その後も付かず離れず、新一はコナンとして蘭と共に生活を重ねる中で互いの気持ちに気付きながらもそれを上手に伝えることができない、伝えようとする度に邪魔が入ってしまう。読者にしてみてはもどかしさでムズムズしてしまうようなふたりの距離。そんなふたりの関係が大きく前進するエピソードが第71〜72巻に収録された「ホームズの黙示録」、そして94〜95巻に収録された「紅の修学旅行」。この2つのエピソードを通して晴れてふたりの関係は幼馴染から恋人となり、多くのファンが祝福したことは記憶に新しい。

服部平次×遠山和葉

『週刊少年サンデー』2017年20号/21号(小学館)
『週刊少年サンデー』2017年20号/21号(小学館)

 新一の良きライバルであり友人である平次とその幼馴染の和葉との恋模様もストーリーの中で気になるところだ。

 21〜22巻に収録された「結婚前夜の密室事件」では、蘭と平次がたまたま同じ柄の服を着ていたことに和葉が嫉妬する様が描かれる。一方で47巻収録の「コナン・平次の推理マジック」ではマジシャンの星河の腕にしがみつく和葉を見てイライラと、同じく嫉妬する平次の姿を見ると、似た者同士でお似合いだなとなんだかホッコリしてしまう。

 そんな平次と和葉だが、お互いに対する強い想いを感じさせるエピソードが28巻に収録の「そして人魚はいなくなった」。人魚が絡む不老不死伝説を巡る連続殺人事件という少しオカルトめいたエピソードだが、捜査中に平次と和葉が崖から落ちそうになるアクシデントが発生。和葉を引き上げようと懸命に力を振り絞る平次だが、平次だけでも助かってほしいと願った和葉は持っていた矢で自分の腕を掴んでいる平次の手を突き刺す。しかし痛みに耐えながらもなお手を離さない平次は苦悶の表情を見せながらこう和葉に言ってみせる。

“う、動くな和葉…動いたら…殺すぞ…”

 なんとしても和葉のことを守り切ろうとする平次の心の底から溢れた名セリフだ。

 近年のエピソードでは、新一の蘭に対する告白、そして修学旅行先での新一と蘭の姿に焦りを感じた平次がなんとか和葉に告白しようとして失敗したり(90〜91巻収録「コナンと平次の鵺伝説」)、和葉を意識するあまり怪盗キッドの変装に気付かなかったり(キッドVS高明 狙われた唇)と、和葉への想いが溢れるばかりに空回りする平次のウブな姿が度々描かれる。新一と蘭のように、2人の恋が成就するのももう間もなくかもしれない。

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