『呪術廻戦』最新16巻でついに乙骨優太が登場! 波乱の世界でどう活躍する?

待望の乙骨登場で目が離せない『呪術廻戦』

 乙骨の登場は、多くの『呪術廻戦』ファンが待ちわびた展開だった。しかし彼に呪術総監部が任命したのは虎杖の死刑執行役。「虎杖祐仁は僕が殺します」というショッキングな台詞を口にする乙骨の表情は、冷たく不気味なもので、0巻で登場した時とは別人のようだ。

 一方、呪術師の御三家の一つである禪院家では、当主の禪院直比人が渋谷事変で命を落としたことによって新しい当主が決まろうとしていた。当主は禪院直哉が継承するかと思われたが、直比人の遺言状には「五条悟が死亡または意思能力を喪失した場合」「伏黒甚爾との誓約状を履行し伏黒恵を禪院家に迎え」「同人を禪院家当主とし」「全財産を譲るものとする」と記されていた。自分が受け継ぐはずだった禪院家当主の座を取り戻すため、直哉は東京で虎杖探索の任に当たっている伏黒を虎杖ともども殺してしまおうともくろみ、魔境と化した東京へ向かう。

 物語は、両面宿儺の力で多くの人々の命を奪ってしまった罪悪感から呪術師の仲間たちから離れて呪霊退治を続ける虎杖と、なぜか虎杖を「弟」だと思い込み「お兄ちゃん」として行動を共にする脹相。そして虎杖の命を狙う禪院直哉と乙骨優太、それぞれの思惑が複雑に入り乱れた混戦状態になっていく。

 「渋谷事変」終了から一気に新展開となり、世界が大きく変貌した『呪術廻戦』だが、構成として見事なのは最強の呪術師として虎杖たちを支えてきた五条悟の不在が、物語の緊張感に繋がっていることだ。

 五条を失ったことによって呪術師たちの世界の均衡が崩れ、そのしわ寄せは虎杖に押し寄せてくる。呪霊だけでなく人間からも命を狙われることとなった虎杖の状況は、かつてなく過酷で目が離せない。

 なお、ジャンプ本誌での連載は2021年28号の「第152話」以降、休載となっている。

 確かに、番外編や休載、ペンの入っていないネームが一部分掲載されるといったことは増えていた。しかし、作品の面白さは失速せず、むしろ作画のアンバランスさが先の読めない物語とシンクロし、作品に強い緊張感を与えていた。このいつ壊れてもおかしくない危うさは、芥見が尊敬する冨樫義博の『幽☆遊☆白書』(集英社、以下『幽白』)の終盤を彷彿とさせるものとなっていた。だからこそ『幽白』のようにいつか壊れてしまうのではないかと心配だったため、「休む」と知った時は安堵した。

 物語の勢いを考えると一気に描き上げてしまいたいという作者の気持ちも理解できるが、ここはいったん立ち止まり、英気を養ってほしい。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■書籍情報
『呪術廻戦』(ジャンプ・コミックス)既刊16巻発売中
著者:芥見下々
出版社:集英社
https://www.shonenjump.com/j/rensai/jujutsu.html

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