文芸書ランキング、社会の“SOS”を反映か? 『52ヘルツのクジラたち』や『お探し物は図書室まで』が伝える声

文芸書から聞こえる社会の“SOS”

参考:週間ベストセラー【単行本 文芸書ランキング】(5月11日トーハン調べ)

 ついに発行部数50万部を突破した宇佐見りんの『推し、燃ゆ』。芥川賞受賞の発表から4カ月、いまだ堂々の3位でランキングから外れる様子はない。そんななか、東野圭吾版『罪と罰』とうたわれる最新小説『白鳥とコウモリ』をおさえて1位に輝いたのは、本屋大賞を受賞した町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』だ。

 海中で歌うように仲間に呼びかけるクジラだが、ごくまれに、通常より高い周波数で声を発するために仲間と出会うことができない“52ヘルツのクジラ”がいるという。声なき声を発している、孤独に助けを求めてさまよう人たちを重ねたという。主人公は、家族から搾取されて育った貴瑚(きこ)。弟が溺愛される一方、母親の連れ子だった貴瑚は小学生のころからネグレクトされ、難病を発症した義父の介護を押し付けられる。友人たちの助けを得て、どうにか窮地から脱するものの、希望の光だと思ってつかんだものが、彼女をまた別の孤独へと突き落とす。そうして、すべてを失った彼女の逃げた先が、祖母の暮らしていた北九州の家だった。そこで貴瑚は、母親から「ムシ」と呼ばれて虐待され、物理的に声を発することのできない少年に出会う……。

 年齢はちがえど似た孤独と痛みを抱えた貴瑚とムシは、ともに52ヘルツのクジラだ。だが、安全に仲間と群れているように見える人でも、実は、声なき声を発していることがある。むしろ仲間には聞かれたくないSOSだからこそ、手遅れになってしまうことも。声をキャッチできたとしても、対応を少しでも間違えばとりかえしのつかない悲劇につながりかねないのは、現実に起きる虐待死の事件などからもわかること。どんなふうに手を差し伸べるのが、本当にその人のためになることなのか。似ていたとしてもまるで違う、その人だけの痛みを癒すにはどうすればいいのか。静謐な文章で真摯に描きだされた作品である。



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