アニメ化決定で注目『サマータイムレンダ』の魅力とは? SFストーリーの中で描かれる「生」への執着
2017年10月から2021年2月まで「少年ジャンプ+」で連載されていた『サマータイムレンダ』。最終回にはアニメ化とリアル脱出ゲーム化されること、また実写化企画が進行中であることが発表されている。
物語の舞台は和歌山県にある架空の離島、日都ヶ島。主人公である網代慎平は、幼馴染の潮が亡くなったという知らせを受けて、故郷である日都ヶ島へ2年ぶりに帰ってくる。
海の事故で亡くなった潮だが、慎平の幼馴染で島唯一の病院「菱形医院」の長男・窓(そう)から潮は事故ではなく、他殺の可能性もあると聞く。
調べていくうちに、島に昔から伝わる「影」の存在が潮の死と関係があるのではないか、と慎平は推測するように。「影を見た者は死ぬ」という言い伝え。それは、潮の死だけではなく、もっと大きな思惑が隠されていた。スリリングな展開、読み始めると一気に引き込まれていく物語。『サマータイムレンダ』の魅力とは一体なんだろうか。
慎平と共に状況への理解を深めていく
この物語の大きなポイントのひとつは慎平が時間を“ループ”をする、ということ(ループできる理由は物語の中で明かされる)。それも、ほんの数日間の間を、だ。トリガーは、「死ぬこと」。慎平は死ぬたびに数日、ループする。最初のループは島へ帰る途中の船の中。島に到着してから……と少しずつ、戻れる時間は短くないっていく。そのループの中で、慎平は自分の状況を把握し、同じことを繰り返さないために、前回とは違う選択肢を探し、進んでいく。
また、慎平の特徴のひとつは物事を“フカン”(俯瞰)して見て、考えること。俯瞰している状況というのは、読者にとても近い。普通の作品よりも、主人公と読者の視点が近いと言えるのではないだろうか。そのおかげで、物語から置いていかれることなく、没入感を深めることができる。
自死への麻痺、ループへの絶望
物語の中で、問題解決のための大きなキーワードとなっている“ループ”だが、これは慎平が死なないと戻ることができない。最初は殺されてループしたわけだが、死ぬことでループできると気がついた慎平は、ある時から自ら死のタイミングを決めるようになる。
主人公が死んである一定のところまで戻るという設定は、RPGゲームっぽいが、慎平が死に対しての恐れが次第に少なくなっていくのが少しずつ人間ならざる者になっていく感じがして怖さもある。
ようやく勝ちが手に届きそうだと思ったらギリギリのところでループしてしまったり、選択肢を間違えてループせざるを得ない時も。ゲームならばうんざりして中断することもできるが、慎平にはそれができない。自分が戦わなければ大事な人たちが死んでしまうのだから。
13巻という巻数だが、ひとときも気を抜くことができないのは、与えられた時間の短さ、更にゲームオーバーを必ず防がなければならない、という設定によるものだろう。