水原希子、旅先でさらけ出した“丸裸の心”ーー写真集『夢の続き DREAM BLUE』が傑作となった理由

水原希子、旅先でさらけ出した“丸裸の心”

 写真家・茂木モニカ撮影の水原希子の写真集『夢の続き DREAM BLUE』。広大な自然と澄んだ空気が感じられる同作に収録されているのは、4年前、水原希子、茂木モニカ、そしてデザイナーのクリスティンの3人が、カリフォルニアを無計画にロードトリップした際に撮られた写真だ。

 当時、水原希子はロサンゼルスに短期留学をしていた。雑誌『AERA』のインタビューでは、アメリカでオーディションを受けるなかで言語の壁や文化の違いに戸惑い、「アジア人」というカテゴリーを求められるような息苦しさがあったと振り返っている。そんな折に友人3人で飛び出した無計画な旅は、本作が示す通り、水原希子にとって最高の旅となった。そして同時に、本作を読むことで、私自身も彼女らの最高の旅を追体験し、今なお余韻に浸っている。

大地を踏むような写真展

『夢の続き DREAM BLUE』

 2021年3月20日から4月4日には、渋谷パルコ4階にあるPARCO MUSEUM TOKYOにて同タイトルの写真展も開催された。そこには、商業施設の一角とは思えぬほど澄んだ空気が漂っていて、決して広くはない場内が広大な大地のように感じられたほどだった。ロードトリップ。大きくプリントされた写真を眺めながら、彼女たちの旅を感じていく。

 写真展のなかで、特に印象的だったのがネガフィルムをそのまま展示したライトボックスだ。街灯がひとつもない砂漠の夜空に浮かぶ大きな月を眺め、今日の旅を回想しながら穏やかな夢へと落ちていく。そんな一夜を思わせる展示は、厳選された一枚ではないからこそ、茂木モニカがシャッターを押した瞬間を流れるままに見られる臨場感があった。旅の高揚感。友情関係。狙った一枚でも、誰かに見せるための一枚でもなく、楽しいから撮る。そんな純粋さに満ちていて、一枚ずつ展示されているほかの写真の説得力も上がった。

 また場内では、風や水など、自然の音が微かに流されていた。これが、現地で彼女らを包んでいたカリフォルニアの空気なのか。砂の香りや水の冷たさまでもが伝わってくる展示だった。自粛生活が続いていたためか、なおのこと解き放たれたような心地よさがあった。

信頼関係が生んだ写真

 写真集には、前述した写真展で見た景色がそのまま凝縮されている。砂漠や雪上を走り回り、のびのびと体を動かす水原希子。誰に対する誇示も遠慮もなく、風景に肌を馴染ませながら、生きる人間としてそこに写っている。それはファッションモデル・女優として知られる水原希子の姿ではあるものの、肩書きや名前が並ぶより先に「生きている人間」として見てしまうのがとても新鮮だ。壮大な景色が大切なメッセージを運んでくれているようで、どこか二人だけ(厳密にはクリスティン含む3人)の世界で完結しているところが、何とも彼女たちらしい。「今の私たち、とっても最高だ!」幸福に満ちたそんな声が聞こえてくる。

 写真集のあとがきに、水原希子はこのようなコメントを残している。

「用意された私らしさ、求められる私らしさ、あなたは何者なの? 毎日、自問自答していた、私は何者なの?少し息苦しさを感じながら…」

 またIMA ONLINEのインタビューでは、

「ファッション系の撮影はプロモーションですから、服をよく見せなければいけなかったり、色々な縛りがあって葛藤があります」

とも語っている。13歳からファッションモデルの仕事をはじめた水原希子は、よくも悪くもイメージに左右される経験が多くあったはずだ。冒頭に述べた「アジア人」というカテゴライズの話もそうだろう。

 他人に対してイメージを抱くこと、カテゴリーで考えること、仕事として求められることをこなすこと。芸能活動をしていなくても、生きるなかでそのような戸惑いや葛藤を感じること、もしくは自分が他人に対して求めてしまうことは、少なからずあるのではないだろうか。しかし、同インタビューでは、茂木モニカに対して「彼女はこだわって物語をつくり、自分らしさを失わずに頑張って撮ってくれる」とも語っている。本作で水原希子が、肩書きや名前にとらわれず「生きる人間」として写っているのは、茂木モニカの純粋なカメラワークに対する信頼があったからだ。無計画でいい。旅先でも、ただの日常でもいい。丸裸の心を曝け出し、本質的に理解しあい、信頼できる関係性こそ理想だ。自分に肩書きや名前がなくとも、周囲が抱くイメージと違った側面があったとしても、側にいて「いいね」と声をかけてくれる人を大事にしたいし、そんな人を見つけられる人生にしたい。そう感じて、心がフッと軽くなった。

インタビュー

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