『アイシールド21』『火ノ丸相撲』『あひるの空』主人公の共通点とは? スポ根漫画が描く、欠点を武器にする方法
漫画作品におけるジャンルで、根強い人気を誇る「スポ根」。プロアマ問わずスポーツに情熱を向ける人間を描くスポ根には、アツい勝負や人間ドラマなど、たくさんの魅力がある。そしてそんなスポ根漫画の主人公に度々共通する特徴が“小柄な体格”だ。なぜスポーツを題材とした作品において、小柄なキャラクターを主人公にした作品が多いのか。そこには一見スポーツとは相性が悪い小柄なキャラにしか果たせない、重大な役割があった。
数多くのスポーツ漫画がある中で、様々なスポーツで描かれる小柄な体格をした主人公。それは『アイシールド21』(アメリカンフットボール)や『火ノ丸相撲』(相撲)など、パワーが必要とされるスポーツはもちろん、『ハイキュー!!』(バレーボール)や『あひるの空』(バスケットボール)など、身長が重要視される競技でも登場する。それではなぜ他の特徴ではなく、小柄なキャラクターが多いのか。その理由はスポーツ漫画の主人公には欠かせない”努力家”という要素に隠されていた。
読者は主人公が熱心に練習を重ね、己のすべてを賭け情熱を燃やす姿に心が動かされ応援したくなる。しかしスポーツに必要な筋力やスピードなどの要素は、努力すればある程度のレベルまで伸ばせてしまうものだろう。そのため現実世界ではありえないほど競技に情熱を傾けるスポーツ漫画の主人公は、遅かれ早かれ弱点のないパーフェクトプレイヤーになってしまうことが予測される。そうなるとリアリティーはなくなってしまい、応援したい気持ちは薄れてしまう。またスポ根に限らず、作品を盛り上げるために必須の主人公の「挫折」も描きづらい。そこで登場するのが、こと大体のスポーツに関して不利に働く、小柄な体格という要素である。
『火ノ丸相撲』の主人公・潮火ノ丸は、大相撲力士の頂点である横綱を目指す高校生。相撲を愛し相撲に全てを捧げる火ノ丸。「心」「技」と申し分ない火ノ丸だったが、彼には1つの短所があった。それが「体」、即ち「身長」である。高校相撲とは言え100キロを超える巨体ひしめく中、火ノ丸の身長は160センチにも満たない。そのうえ、大相撲の新弟子検査には、火ノ丸には到底超えられない身長制限があった。横綱になると話す火ノ丸に、身長制限があるから無理だと説き伏せる相撲部部長・小関。しかしそれに「高校のタイトルを総なめにして大相撲の方から頭下げに来させる」と息巻いた火ノ丸は、小柄な身体で猛者に挑む、茨の道を進んでいくのだった。