『ぼくの地球を守って』の月基地は“働きたくない職場”? ストレスフルな環境を考察
初めて『ぼくの地球を守って』(ぼくたま)を読んだとき、一番最初に思ったことは「湯豆腐って夕食のメインディッシュになるんだ……」ってことでした。物語の本題に入る前、主人公ありすのおうちの夕食が湯豆腐だったんです。私の実家では父が酒のアテに食べてるもので、夕食に出てきたことがなかったので、自分の認識とのギャップが一番頭に残ってしまった。ありすの弟なんて食べ盛りだろうに、ご飯と豆腐だけなんて……。
『ぼくの地球を守って』は連載時、多くの読者の頭をボーッとさせた作品でした。自分の存在自体の因果が前世にあったなんて、生きにくさを感じている若者には格好の逃げ場になりそうです。
登場人物は、日本の若者です。でも彼らの前世はなんと他の惑星から月にやってきた異星人だったのです。彼らは地球を見守るために遠い宇宙から派遣された技術者でした。7人で月の基地に滞在し、地球を見下ろしながら調査したり恋愛沙汰でゴタゴタしながら暮らしていたのでした。
『ぼくたま』は、ざっくり言うと「過去の異星人たちのゴタゴタが転生したあとの現在に持ち越されて、いま日本がすごく大変だ」というお話です。過去と現在が複雑に絡み合った構成はとても読み応えがあり引きこまれます。
さてちょっとお話ししたいのは転生前のストーリーです。異星人が造った月基地にはたった7人しかいませんでした。寝ても起きても仕事しても食事の時も、ずーーっと7人だけ。