アナウンサー・弘中綾香が語る、“純度100パーセント”の本音 「多様性を人生のポリシーにしている」
30代、期待の変化
――対談に登場された林真理子さん、若林正恭さん、加地倫三さん。この3名はそれぞれ、弘中さんにとってどのような存在でしょうか。
弘中:まず、私はもともと夢も希望もなく生きてきた人間なんです(笑)。ですが、27歳ごろから「30代になったらどうしたいですか?」と質問される機会が多くて、考えるんですけど自分では全く見えなくて。30代を目前にして迷いのなかにいたので、人生の先輩であり憧れの存在である人たちから、私の30代からの生き方を指南していただこうと思って、このお三方にオファーさせていただきました。
林さんは、私の憧れの女性像なんです。仕事をこなして、好きなお洋服を買って、好きなもの食べて、お友達もたくさんいて……、ずっと楽しそうだなって。小さい頃に林さんのエッセイを読んで、こんな大人になりたいって強く思ったので、ぜひお話ししてみたいと思いました。
若林さんは普段からお仕事でご一緒させていただいてますが、改まってお話しする機会が今までなかったので、今回対談の場を設けさせていただきました。若林さんは、私の仕事ぶりを近くで見てくださってる方ですし、芸能界の第一線でずっと活躍されてる方なので、これからのお仕事についてお話ししました。
加地さんは私の会社の先輩で、私が受けたアナウンサー試験のカメラテストで面接官をされていた方なんですが、私がテレビ朝日に入社できたのは加地さんが絶賛してくれたおかげだという噂がありまして……。その真相を聞きたいと思ったのと、まだ何者でもなかった就活生の私を選んだ理由や、今の私の現状をどう思うのかについて聞いてみたくて、きていただきました。
――林さんは今回初めてお会いになったんですよね。子どもの頃からの憧れの方に会ってみて、どうでしたか?弘中:予想通り、とてもエネルギッシュな方で、たくさん元気をもらいました。林さんとは仕事の話に加え、恋愛、結婚の話もさせていただきましたが、いろいろ迷ってる私に対して「30代がいちばん楽しかったよ。大丈夫だよ」って言ってくださって。私は、いわゆる“出る杭は打たれる”とか、みんなに合わせなければいけないみたいな風潮は、もういらないんじゃないかって思っていて、その考え方は林さんの影響を受けているんですね。実際に林さんがそのようにエッセイに書かれていたわけではないですが、「自分のやりたいことは貪欲に挑戦していけ!」という考え方を私に教えてくださった方なので、まさに私が抱いていた印象通りの方でした。
――それこそ「アナウンサーらしくない」と言われることもあったかと思いますが、現在、アナウンサーの枠を超えてさまざまなお仕事をしてますよね。今振り返ってみて、アナウンサーという入り口を通ったことに、何か意味があると感じますか?
弘中:入り口かぁ……。どうなんでしょうね。私は滑舌がいい方ではないですし、声も高いですし、正直アナウンサー向きではないと思います。もともと就職活動のときも「名の知れた会社に入れたらいいや」程度の気持ちで受けて、はじめに内定をもらったから入社したというどうしようもない学生でしたし。入社してからがむしゃらに目の前の仕事に取り組んで、気付いたらここにいたという感じです。私にとっては全てがプラスになっていると思いますが、アナウンサーに向いてたってことなのかな……? どうなんだろう(笑)。
――ですが、入社してすぐにミュージックステーションのサブMCに抜擢されました。エッセイのなかでは、ミュージックステーションのプロデューサーに「お前には期待していない」と言われた話も書かれていましたが。
弘中:プロデューサーの言葉は鮮明に覚えてますね。まだ入社して間もない頃で、30分くらいかけて「よろしくお願いします。頑張ります」といったメールを送ったのに、たった2分で返信がきて「お前には期待してないから、大丈夫だよ」って。エッセイで詳しく書いているので、ぜひ読んでいただきたいですが、本当に驚きましたよ。
――でも「期待されてないこと」が逆にありがたかったと(笑)。もうすぐ入社して9年目になりますが、現在寄せられる「期待」についてはどう思いますか?
弘中:「期待してない」というのは、「何もできないことを承知のうえでサブMCに選んでるから、これから成長してくれればいいんだよ」という意味だったんですが、当時まだ新人だった私はその言葉の意味を知って肩の荷が降りたんです。ミュージックステーションを卒業するときも「この仕事をピークにせず、次の仕事に繋げていってください」と言われましたし、アナウンサーとして大事なことが学べる場所だったと思います。逆に今は、「期待してるよ」って言われることが多くなりました。あの頃と違ってキャリアも積んでますし、期待されないのはマズいとも思いつつ、あまり真に受けすぎないようにはしています。
ですが、アナウンサーって、制作側の人たちから選ばれないと何も始まらない仕事なんですよね。これはタレントさんも同じだと思いますが、選ばれたからには選んでくれた方の思いを裏切らないように仕事しなければと考えています。これは入社した当初から今までずっと一貫して変わらない意識ですね。
――では、30代はどうしていきたいですか?
弘中:正直、30代を迎えることが少し不安だったんですが、林さん、若林さん、加地さんとの対談を通して、楽しみなことも増えてきました。仕事面では責任も増えてくる分、今まで頑張ってきたことを糧に、もっとやりたいことができるステージに入っていくんじゃないかって思っています。これからがスタートだって気持ちで、前向きに頑張りたいと思います。
――最後に、読者の方にエッセイ本の見所をご紹介お願いします。
弘中:想像以上に分厚くて大きな本に仕上がりました。その分、中身がいっぱい詰まっていて、お値段以上の読み応えがあると思います。見ても楽しい、読んでも楽しい内容になっていますので、損はさせないはずです!
■書籍情報『弘中綾香の純度100%』
弘中綾香 著
定価:1,980円(税込)
出版社:マガジンハウス
公式サイト