“恋を忘れた”大人こそ読むべし! ラブコメ少女漫画『素敵な彼氏』が思い出させる気持ち
河原和音による漫画『素敵な彼氏』の最終巻が2020年の11月に発売され完結となった。『先生!』や『青空エール』など、キャラクター心理描写を瑞々しく描く河原和音。『素敵な彼氏』は「カップルに憧れる」ヒロイン小桜ののかの高校3年間を描くラブコメディだ。
小さいころに年末のカウントダウンで見たキラキラした「彼女と彼氏」に憧れて、強烈に彼氏が欲しい! と思って過ごしてきたののか。恋バナも恋愛ドラマも恋愛マンガも大好き。高校生になったら自分にも彼氏が……と夢見ていたが、悲しいかな、行動しなければもちろん彼氏はできない。何より、ののかには好きな人もいないのだ。見かねた友人たちが開いてくれた合コン。そこで出会ったのが、何を考えているか分からない、でも気遣いができて優しい桐山直也。
彼氏が欲しいのに男の子が苦手だったののかだが、直也にはリラックスして話せるようになる。そして初めて人を好きになるが……。
恋の定義を改めて問いかける
「高校生になったら彼氏は自然にできると思ってた」
子どものころに漠然とそう思っていた人も多いのではないだろうか。しかし、過去の自分が思い描いた自分というのは、総じて現実とは違うものだ。年を重ねるにつれて気がつくものなのだが、ののかは気付かなかった。とにかく、「彼氏がほしい」「彼氏と年末のカウントダウンに行きたい」というのが夢だったのだ。しかし、直也と出会ってから改めて気がつく。
「一生に一回くらい私だけの男の子に愛されてみたい」
「だれかのひとりだけの女の子になってみたい」
多くの人が一度は抱いたことがある気持ちを、ののかは16歳の冬に声を大にして宣言した。
そこからが大変である。なにせ、人を好きになるとはどういう気持ちなのか、というのもののかは自覚していなかった。直也のことが“好きな訳ではない”と思うが、周りの恋愛の手練れにアドバイスをされれば「もしかしたら好きなのかもしれない」と揺らぐ。
ののかが優柔不断なのではない。一体、人はいつから「好き」という感情に定義づけができるようになるのだろう。この気持ちが恋だと気がつくのだろう。鼓動が速くなっているから? いや緊張しているだけかもしれない。吊り橋効果なんて言葉があるぐらいだ。何かを恋と勘違いしている可能性だってある。だからこそ、周りは「それは恋だよ」と決め付けられない。自分で「これは恋なのか?」を問い続けなければならないのだ。