2021年、まず読むべき漫画『チ。』 「地動説」をテーマに描く美学とは?

2021年、まず読むべき漫画『チ。』 「地動説」をテーマに描く美学とは?

 漫画という表現はなんて自由なのだろう。岩明均が『ヒストリエ』の連載を始めた時、あらためてそう思った。なぜならば、アレクサンドロス大王……ならまだしも、その書記官という(日本ではあまりメジャーとはいえない、さらには出自も不明の)人物が主役を務めるような物語を、隣接する表現ジャンル――たとえば映画やドラマの世界でいま、オリジナルストーリーとして制作するのはまず無理だろうし、そもそも作ろうと考える人もそれほど多くはないはずだからだ(小説にしようと考える作家はいるかもしれないが)。

 ところが、周知のとおり、結果的に『ヒストリエ』は極めて優れたエンターテインメント作品として多くの読者を得ており、そのこともまた、漫画という表現の自由さと受け皿の大きさを証明するかたちになった。

 さて、そんな岩明均をして、「まぎれもない才能を感じる」(帯の推薦文より)とまでいわしめたものすごい作品の第1集が、昨年の12月に発売された。魚豊の『チ。―地球の運動について―』である。

 同作は、サブタイトルからもわかるように「地動説」をテーマにした物語だ。舞台は15世紀のヨーロッパの某王国、主人公は12歳の少年・ラファウ。ちなみにこのラファウ、その歳で大学に合格したという天才児であり、優等生を装いながら、「世界、チョレ〜〜〜」とほくそえんでいるような世渡り上手(または合理主義者)でもあるのだが、心の底では「天文」への熱い想いが燃えたぎっている。

 だが、地球を宇宙の中心として考える「天動説」が定説である時代に、天文を研究することは命がけであった。なぜならば、研究すればするほど、天動説への疑問は生じてくるはずであり、それは必然的にある「真理」へと研究者を導いていくからである。そう――「地動説」だ。しかし、地球が他の惑星とともに、太陽の周りを自転しながら公転しているというその考え方は、当時の社会では完全な異端思想とされ、それを研究・提唱する者は厳しい拷問や処刑の対象になるのだった……。

 ラファウはある時、怪しげな元学者の面倒をみることになり、(もともと天文の知識もあったことから)彼が唱える宇宙の「真理」をすぐに理解するようになる。だが、それをさらに追究することは、養父への裏切り、そして、彼自身の命を脅かすことにつながっていくのだ。それでもなお、人は、自分が信じる道を突き進むことができるのか、あるいは、(帯のアオリにもあるように)世界を敵に回しても貫きたい美学はあるか、というのが、この作品の(少なくとも第1集における)最大のテーマである。

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