『マイ・ブロークン・マリコ』は2020年漫画界の最大の収穫か? 各媒体のランキングを振り返る

2020年の漫画界を振り返る

 さて、おそらく2021年は、芥見下々の『呪術廻戦』の年になりそうな気がするが(各書店での単行本の品薄ぶりを見るに、すでにブレイクしていると言っていいだろう)、同作についてはまた別の機会に書かせてもらうとして、最後に、この12月に「第1集」が発売されたばかりの、強烈な作品を紹介したい。

 それは、魚豊の『チ。―地球の運動について―』である。

 物語の舞台は、異端思想が弾圧されていた15世紀のヨーロッパ。12歳で大学に合格した天才少年・ラファウは、養父の願いどおり「神学」を専攻したいと口では言いながら、心の底では「天文」への熱い想いを抑えられずにいた。と、そんなある日、彼はある怪しげな学者と出会い、この世界を動かしている「真実」を知る……。

 サブタイトルからもわかるように、本作は「地動説」についての物語だ。そして、自らの好奇心に正直であるために、あるいは信念を貫くために、命をかけた漢(おとこ)の物語だ。2020年12月下旬の現時点において、「このマンガがすごい!」、あるいは、「このマンガを読め!」という言葉は、この『チ。』のためにあるとしか思えない。必読。

■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。Twitter

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