『鬼滅の刃』『呪術廻戦』『約ネバ』『チェンソーマン』……2020年の“ジャンプ一人勝ち”を振り返る
2020年は「少年ジャンプ」一人勝ちと言える年だった。
まず何より吾峠呼世晴の漫画『鬼滅の刃』の大ヒット。昨年のアニメ化によって人気が急上昇し、単行本も(文字通りの意味で)桁違いの売上となり、最終23巻が発売された12月の時点で累計発行部数1億2000万部となった。
アニメから入った読者が単行本をまとめ買いし、そこから、クライマックス間近の本誌連載に追いつくというアニメ・単行本・雑誌という各メディアの連携がうまく繋がったことがヒットの要因だが、アニメ化で火が付いた作品の勢いが連載終了まで続くという現象は、今までになかったものだろう。この勢いは連載終了後も続いており、映画『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』も大ヒットを記録。『千と千尋の神隠し』を抜き、歴代興行収入第一位となった。
最終巻発売の際に全国紙の新聞5紙に新聞広告が掲載されたことも話題となり、文字通りの意味でも国民的大ヒット作となっており、最終回を向かえた今もこの勢いはまったく衰えていない。むしろ連載終了後の現在の方が、人気が高まっているように感じる。その意味でも2020年は『鬼滅の刃』一色の年だったと言って間違えないだろう。
一方、昨年の『鬼滅の刃』と同じようにアニメ化によって人気に火が付き、単行本の売上が倍増しているのが、芥見下々の『呪術廻戦』だ。本誌ではすでに大人気の看板作品だったが、「呪術」を用いたバトルや呪術師や呪霊を中心とする世界観が複雑すぎたため、ジャンプ読者以外には若干、敷居が高かった。しかし、アニメ版は複雑なバトルや世界観をうまく整理して見せており、入り口として最適なものとなっている。
UfotableやMAPPAといった制作能力の高いスタジオがアニメ化することで一気に一般層に広がるという流れは、今後のジャンプ漫画の必勝パターンとして確立されたと言えるだろう。
また、5月に『鬼滅の刃』(全23巻)、6月に『ゆらぎ荘の幽奈さん』(全24巻)と『約束のネバーランド』(全20巻)、7月に『ハイキュー!!』(全45巻)、12月に『チェンソーマン』(第1部完、全11巻の予定)と『ぼくたちは勉強ができない!』(全21巻の予定)と、人気作が続々と終了した。
今後のジャンプを心配する声も多かったが、人気がある限り連載が引き伸ばされるというイメージが強かったジャンプ連載が「終わるべきタイミングでしっかりと終わる」という連載方針に変わったことを強く打ち出す結果となっていたと思う。
第1部の連載が終わった『チェンソーマン』は、「ジャンプ+」で第2部をスタートする予定だが、元々、作者の藤本タツキは「ジャンプ+」で連載した『ファイアパンチ』で注目された作家だった。
『チェンソーマン』は先の読めない物語と斬新な漫画表現によって本誌に新風を巻き起こした。本作の成功は、ジャンプ本誌と「ジャンプ+」の連携がうまくいったことを証明するものだったが、『チェンソーマン』の第二部が「ジャンプ+」に移ることを考えると、今後、ジャンプ漫画の中心は今後、「ジャンプ+」へと移っていくのかもしれないとも感じる。