『東京喰種』金木研は死にたくて仕方がない? 悲しきヒーローの苦悩と成長

『東京喰種』金木研は死にたくて仕方がない? 悲しきヒーローの苦悩と成長

 2011年から2014年まで「週刊ヤングジャンプ」で連載されていた石田スイによる『東京喰種トーキョーグール』。2014年にはアニメ化、2017年には実写映画化もされた人気作品だ。

 舞台は東京。そこには人間以外に、人を喰らう喰種が蔓延していた。そんな中で突如人間から半喰種とされてしまった青年、金木研の苦悩と成長を描く。

人間ならざるもの

 喰種は見た目は普通の人間であるため、一見それとは分からない。だから、知らずに恋をしてしまうこともある。

 主人公の金木研は好ましく思っていた女性・神代利世と、ある小説で盛り上がり本屋デートへと出掛けることに。しかし、利世は実は喰種。別れ際に襲われ、瀕死だったところに、利世に鉄骨が落下したことで危機を逃れる。金木は病院に搬送され、一命を取り留めるが、その際に無断で利世の臓器が移植され、半喰種の体となってしまう。

 普通の人間であったのに、あることがきっかけで「人間ではないもの」になってしまうキャラクターは少年漫画に多く登場する。近年の人気漫画作品でも『呪術廻戦』の虎杖悠仁、『チェンソーマン』のデンジ、『怪獣8号』のカフカ、『鬼滅の刃』の禰豆子……パッと思いつくだけでもこれだけある。

 その中でも、自ら進んで「人間ならざるもの」になったキャラクターと、望んでいないにも関わらずなったのキャラクターに分けられるが、金木の場合は後者だ。

 突然の変化を金木は受け入れることができない。今まで普通に食べていた食事が受け付けなくなる。そればかりか親友が「おいしそう」に思えて食欲をかきたてられてしまう。それが金木には信じがたく、苦痛だった。

 東京喰種は捕食シーンが多く登場するが、一方で「普通の食卓」もたびたび登場する。喰種たちは人間に喰種と悟られぬように同じものを食べてみせる。その描写は非常にまずそうだ。食べなければ死ぬ。徹底した「まずい」の描写は、意識が死に向かっていることを遠回しに表現しているようにも見える。

物語の中で変容する金木の心と身体

 金木は優しい人間だ。「傷つけるより傷つけられる人に」と思って生きてきた。母親もそうだった。自分の姉の夫が作った借金返済を手伝うために働き過ぎて過労で亡くなった。金木という子どもを残して。拷問を受け、精神的にもギリギリの状態の金木に、自身の中にいる利世はこう語りかける。

「どちらも選んでいるようで どちらも見捨てている」
「母親も子を愛しているならあなたを選び馬鹿姉は見捨てるべきだった」

 一方を捨ててでも、何かを守らなくてはいけない。金木も金木の母も優しいのではなく、何かを捨てる覚悟(強さ)が足りなかったと利世は言う。利世との対話、いや自身との対話を経て、金木は大切な人たちを守るために喰種である自分を受け入れる。追い詰められていた金木は相対した喰種に向かって言う。

「『共喰い』をすれば“喰種”の血が強まる…だっけ?」

 覚醒した金木は圧倒的な強さを見せ、強敵であった喰種を倒し喰らった。「まずいまずい吐きそう 最低の味だ」と言って。

 拷問を受け続け、目の前で仲間を殺されるなど、大きなストレスを受けた金木の髪は真っ白になる。見た目だけではなく、優しく温厚だった金木はなりをひそめ、冷徹で攻撃的な一面を見せるようになる。そして共喰いを続けより強靭な力を手に入れた金木。

 どうして強くなろうとしたのか。それは自分が喰種になったときに助けてくれた喫茶「あんていく」の面々や、その中で出会った女性喰種トーカの存在があった。

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