宝島社「付録本」ヒットの秘訣とは? 編集者に訊く、流通網を生かした販売戦略

宝島社「付録本」ヒットの秘訣とは? 編集者に訊く、流通網を生かした販売戦略

 誰もが一度は購入したことがあるであろう「付録本」。付録本の歴史は意外にも古く、始まりは大正時代の半ばだと言われている。そんな付録本で今なお順調に売り上げを伸ばし続けている出版社が宝島社だ。宝島社はいかに販売部数を伸ばしていったのか。

 宝島社広報課・川越桃子氏同席のもと、累計50万部のヒット作「人気文具付録シリーズ」の企画・編集を担当した、同社ムック局第2編集部の佐藤瑞恵氏にインタビュー。同シリーズヒットの理由から、宝島社における付録本の歴史、さらには雑誌やムックの今後について語ってもらった。(編集部)

「人気文具付録シリーズ」誕生の背景

ーー「人気文具付録シリーズ」を手掛けるようになったきっかけを詳しく教えてもらえますか?

佐藤瑞恵(以下、佐藤):2016年当時SNSで手書きのノートを見せ合う、ちょっとしたブームがあったんですね。そこで、クリエイターから一般のかたまで、様々な人たちの魅力的なノートを集めた『夢をかなえる!私のノート術』という本を作りました。その反応が非常によかったので、2016年〜2018年ぐらいにかけて、ノートや手帳、ふせんなどのテーマで「私のノート術」シリーズを制作していたんです。その中で、女性をターゲットにしたかわいい文具が盛り上がっていることを実感することが多くなって、女子向けの文具を紹介する『毎日が楽しくなる!ときめき文具』という本を作りました。

 この本の付録としてふせんやシールをつけたら楽しそうだなと思って、「私のノート術」でご一緒する機会のあった「クレパス」「クーピーペンシル」「図案スケッチブック」とコラボしたんですね。この本自体の売れ行きはもう一歩という感じだったのですが、「文具女子博」(※1)の盛り上がりが年々大きくなっているのは知っていたので、そういうイベントに集まる人たちに届く本ができたかなという感触はありました。その後、もっと付録自体を主役にしたものを提案できないかなと考える中で出てきたのが、「クレパス柄フラットペンケース」を付録にした『レトロでかわいい!サクラクレパスの文具たち』です。この本が、思った以上の反響があって手ごたえを感じました。こうして始まったのが「人気文具付録シリーズ」です。

※1「文具女子博」……”文具好きが最高に楽しめるイベントを!”を合言葉に2017年12月にスタートしたイベント。82社のメーカーが出展し2万点以上の文具が並ぶ。

ーー「人気文具付録シリーズ」はこれまで何冊手掛けましたか?

佐藤:『レトロでかわいい!サクラクレパスの文具たち』や『純喫茶ぺんてるへようこそ。』、『ZUAN LOVE! 「図案スケッチブック」がある毎日。』、『MONO文具BOOK』など、6冊ほど手掛けました。現在発売が決まっているもの、制作中の物を含めると計8冊となります。

ーーブランド側にとっても、宝島社にとっても、もちろん読者にとってもWin-Winの企画だと思いました。読者の反響や、コラボしたブランドからの評判はどうでしたか?

佐藤:読者の反響はかなり良くて、売れ切れ続出という感じでした。主な購買層は女性で、40代の女性が一番多いです。やはりどのブランドも彼女たちにとって馴染み深いデザインということ、文房具という身近なものが使いやすいアイテムになっているということが、評判が良かった理由かなと思います。ブランド側からも喜んでいただけて、ありがたい限りです。

SNSを通じたマーケティング

ーー「人気文具付録シリーズ」はSNSもうまく活用していた印象です。

佐藤:今の時代はツイッターで、これから発売される商品に興味がある人がツイートしたり、インスタグラムに投稿したりしますよね。「今度こういう付録の本が出ますよ」と発信すると、それが一気に拡散されて、今度は本を購入した人が、「私はこの付録をこうやって使っています」みたいにSNSに投稿してくれるので、SNSを通じてすぐに反響を知ることができます。

 以前はその商品を買った人がどう使っているのかなかなか分からなかったと思うのですが、今はそれをすぐに知ることができるので、次の企画にも生かしやすい。ここが使いづらかったと言われた時も、次回作では修正できる。SNSを通じて、購入した人の意見が可視化される。こうしたSNSでの盛り上がりや、文房具売り場とは別の、書店という売り場を通じて新しい層にリーチできることは、ブランドにとってもプラスなのではないかと思います。

 本自体は16ページとボリュームが限られているのですが、実はこの16ページの誌面にも情熱と時間をかけているので、作る側としては本もちゃんと読んでもらえると嬉しいですね。

ーーもっとも反響が大きかったものはなんですか?

佐藤:『ZUAN LOVE! 「図案スケッチブック」がある毎日。』です。情報が発売前にすごい勢いで拡散されて、あっという間にネット書店でも買えるところがなくなってしまい……という感じでした。その後、自粛期間に入ったので、余計に買いづらくなる、といった具合で。発売時期が4月の中旬だったので、ステイホームでグッと内に閉じ込められたタイミングだったと思うんですよ。なので、少しでも気分を上げられるようなものというか、楽しめるもの、みたいに捉えてもらえたのかなと思いました。

ーー「人気文具付録シリーズ」は編集部の中で話題になりましたか?

佐藤:私が所属するムック局は実用書が中心で、付録商品をメインに作る部署とは別なので周りの編集者たちは「人気文具付録シリーズ」を物珍しく面白がってくれました。

 私の机の上に置いてある付録サンプルを見て、周りの編集者が「これ何?」と手にとったり声をかけてきてくれるものはよく売れる、という印象です。ポンと置かれているときにこうして誰かの目に留まるものは、書店でもそういう風に見えているんだろうなと思います。

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