『呪術廻戦』面白さのポイントは? ジャンプ大好き評論家3名が徹底考察

『呪術廻戦』面白さのポイントは? ジャンプ大好き評論家3名が徹底考察

アニメ化で生まれる客観性

成馬:『呪術廻戦』は、漫画で読んでいた時は分かりにくかったことが、アニメで観るとはっきりと分かるようになりましたね。特に1巻冒頭で、虎杖のおじいちゃんが亡くなったことの重要性については、漫画では読み飛ばしていた場面で、虎杖が両面宿儺に変身する場面や呪霊とのバトルの方に目が行っていました。

 だから、天寿を全うしたおじいちゃんの死を「正しい死」、呪霊に殺される理不尽な死を「正しくない死」と、価値基準を提示している部分の重要性はアニメを見て改めて気づいたというか。

倉本:たしかに。漫画では、呪霊の恐ろしさのゾワゾワ感は初期からものすごく上手く描けているけど、ドラマの見せ方はまだ今ほどうまくいってなかったかもしれない。

成馬:『鬼滅の刃』もそうでしたか、アニメ化されることで、作品に客観性が生まれたんだと思います。漫画は見開きに色々なコマが並んでいて、それを読者が目で追うことで話が進んでいく。だから、自分で作品の重要な部分を決めて読んでしまう側面があるので、ついつい読み飛ばしてしまうコマもあるんですよね。

 つまり、読者によって作品を読み解くレベルの差が別れてしまう部分があるのですが、アニメは1コマずつ丁寧に見せて、重要な場面は尺も伸ばしてくれるので、映像や台詞の優先順位が漫画に比べると分かりやすい。もちろん、アニメの作り手が作品のテーマをちゃんと理解していることが前提ですけど、『呪術廻戦』は「死」が重要なテーマだとちゃんと描いているので、そこを起点に物語を辿っていくと、作品のテーマがはっきりと分かる。

 この「死」を起点に物語を紡ぐというのは、『呪術廻戦』だけでなく、『チェンソーマン』や『鬼滅の刃』といった近年のジャンプ作品に共通する傾向ですよね。 

 たとえば伏黒の立場だと、自分が助けた虎杖が宿儺になって人を殺してしまったらどうするんだという葛藤がある。

倉本:二度目の無免許運転で女児を轢き殺してしまった受刑者を伏黒ら三人で助けに行くというエピソードがありましたよね。伏黒は仲間の命を危険に晒してまでわざわざそんなやつを助けたくないって思うんだけど、虎杖は、全員助けよう、助けられなくてもせめて遺体くらいは持ち帰ってあげようと思っているという。はたして命の平等とはどんな形で実現されうるのかという問いもそこにある。

『呪術廻戦』(3巻)

成馬:その後、伏黒が、殺されてしまった受刑者のお母さんにネームプレート渡すんですよね。そのお母さんが最後に「あの子が死んで悲しむのは私だけですから」と言って泣くんですけど、そういったエモーショナルな話を、節々で描いている。だから、「人が死ぬことの重み」が回を追うごとに増していって、話の緊張感も上がってきている。

倉本:「人の死」は『呪術廻戦』の作風を決定づける重要なモチーフですね。私、今でこそ大好きだけれど、釘崎野薔薇のキャラクターが最初はよく理解できていなかったんです。当初は「東京に出たいから呪術師になった」、「私が私であるために」という価値観が彼女の核であるかのように説明されるんだけど、その時点では彼女の内面を見ていないから気持ちが全然乗らなくて。

 でも、野薔薇の死が確定しそうになる「あの子の話」っていうタイトルの回で、芥見先生は死に際した野薔薇自身の心情を直接描くのではなくて、これまで周囲の人間から野薔薇がどういう風に見られていたのかを間接的に描くという見せ方をしてきた。あれはめちゃくちゃうまいと思いました。

 本人ではなく周辺からその人の輪郭を立ち上げるうまさ。初期の段階で、ここまで考えてやってきたのか、ストーリーの進行とともに思いついたのかは分からないけれど、芥見先生は描いてるうちにどんどん化けていった作家だなって、私は勝手に思っています。

成馬:特に週刊連載は作家を急激に成長させますよね。冨樫先生も『幽☆遊☆白書』の初期の頃は、大化けするなんて思えなかったじゃないですか。画は丁寧でうまいしいろいろ描ける人だけど、あそこまですごいところにいってしまうとは思わなかった。その意味でも芥見先生は、いわゆるジャンプ的優等生だと思います。作家が連載しながら進化していく様子を見られるのがジャンプの良さですよね。

岡島:芥見先生も藤本先生も2人ともすごく明晰な方だと思います。その場しのぎでどんどん話を作っていくだけじゃなく、大枠でちゃんと世界観と設定を作って、その上で描き始めていると感じます。藤本先生はもっとドライなんですけど、芥見先生は湿り気がある感じがする。藤本先生はキャラにあまり愛情がなく(笑)、物語を第一に置いてる感じがするけど、芥見先生はキャラに愛情を持っていて、そのことで物語にドライブ感が出て、読者がよりキャラに感情移入しやすくなっている。『呪術廻戦』の方が従来のジャンプらしさがある。

 あと、アニメと同時進行的にリンクしているところがあるじゃないですか。アニメの野薔薇の幼少期のデザインって、アニメのキャラデザ担当の平松禎史さんがデザインしたんですよね。それを連載で取り入れたり、アニメの進行に合わせてキャラがクローズアップされるような話をジャンプの連載で一緒にやっていたりとか。そういうリアルタイム性というか、連載と一緒に楽しめるのもジャンプっぽいと思います。

成馬:絵はどんどん変わっていってますよね。当初は線が細くて均一で見やすい絵だったけど、後半になるほど『HUNTER×HUNTER』みたいな線の強弱がはっきりした荒々しいタッチに変わってきている。その絵柄が、また今の不安定で先がどうなるかわからない物語の緊張感にうまくハマっている。

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