亡くした猫も、貰われていった猫も、すべて愛おしい……猫歌人が詠む「猫の短歌」

亡くした猫も、貰われていった猫も、すべて愛おしい……猫歌人が詠む「猫の短歌」

あの子を愛した、特別な「あの日」に浸れる

 猫との出会いは、とても運命的なものだ。何十匹もいた保護猫カフェから我が家にやってきた子や偶然、職場近く出会った子、里親募集をやめてうちの子にした子など、愛猫との出会いを振り返ると、赤い糸のような縁を感じる。

 数ある猫の中で奇跡的に出会えた子への愛はたとえ亡くなったり、譲渡したりしても揺らがない。私たち猫好きは猫が忘れてしまったとしても、出会った時に交わした「幸せになってほしい」という願いをずっと抱き続けている。

 そんな猫好きあるあるな心境を仁尾氏は自身の譲渡経験を交えつつ、こんな短歌で表現する。

〈こちらから決めてお別れする猫で 泣く意味がなく泣くわけがない〉
〈口角を上げる練習 里親に猫を届けにゆく助手席で〉
〈もらわれていった子猫に この家を思い出さない未来を望む〉

 これらの短歌からは、「飼いたい」と「飼えない」の狭間で苦しんだ心や猫の幸せを最優先に考えたことが伝わってきて、目頭が熱くなった。手塩にかけて育てた猫の里親が決まった時に感じてしまう、なんとも言えないさびしさや、愛ゆえの譲渡時の緊張感など、猫好きならではの複雑な心境も丁寧に記されているからこそ、仁尾氏の作品は心に染みるのだろう。

 ゴミを荒らされないように買ったペダル式のゴミ箱が愛猫の死によって必要なくなった日や、新しい出会いがペットロスだった心に灯をともしてくれた日など、私たち猫好きには誰にだって忘れられない“あの日”がある。そんな大切な日を思い出させてくれ、かけがえのない記憶に浸らせてくれる本書は、笑って泣ける猫愛補給本。

 せっかくなので仁尾氏を見習って作った、猫愛たっぷりな短歌で本稿を締めたいと思う。

「これよりも もっと高いおやつくれ」その訴えが生きる源

 猫がいる家に帰ること。それは私たち猫好きにとって、最大の幸せだ。

■古川諭香
1990年生まれ。岐阜県出身。主にwebメディアで活動するフリーライター。「ダ・ヴィンチニュース」で書評を執筆。猫に関する記事を多く執筆しており、『バズにゃん』(KADOKAWA)を共著。

■書籍情報
『猫のいる家に帰りたい』
著者:仁尾智
絵:小泉さよ
出版社:辰巳出版

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