幸福なオタクライフが、ここにある 『マキとマミ ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~』完結に寄せて
町田粥の『マキとマミ ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~』が、第4巻で完結してしまった。あああああ、もうちょっと続けてほしかった、ふたりを中心にした、愉快なオタク・ライフを見ていたかった。……などと思うのは、作品が面白かったからである。物語世界から離れがたいからこそ、このような気持ちを抱いてしまうのだ。
本作は作者がツイッターに投稿したところ、たちまち注目が集まり、ウェブサイト「ジーンピクシブ」で連載された漫画である。物語の主人公は、間宮マキと森山マミという、同じ会社に勤めるふたりの女性。マキは34歳で、主任をしている。マミは25歳で、入社3年目のOL。ふたりの関係は、単なる上司と部下だった。
ところがマキとマミは、乙女ゲー『どき☆ジェネ』(正式名は『どきどき☆ジェネレーション』)を愛する、隠れオタクであった。第1話「呼び出し」で、そのことが分かり、意気投合したふたり。とはいえ『どき☆ジェネ』は、5年前に開発がストップしており、いまや衰退ジャンルである。それでもマキとマミは『どき☆ジェネ』を愛し続けるのだった。
このふたりに、マキの弟で放送作家の間宮学と、学の友人でカフェ「金木製」のオーナーをしている真下透、透の姉でマキの高校時代の先輩だった緑子の3人が、重要な脇役として登場する。もちろん、みんなオタクだ。学は、「ご両親といっしょ」という、60年近く放送されている幼児向け教育番組を、熱心に追いかけている。透は、百合ジャンルで創作活動をしている。緑子は、ジャンル愛が強すぎて、たびたび炎上騒ぎを起こしているのである。
そんな彼女たちの日常が、ユーモラスに描かれていく。オタクあるあるネタで埋め尽くされているので、オタクの人なら共感しかない。本作とは関係ないジャンルのオタクでも、楽しく読むことができるだろう。一例として、第十一話「衰退ジャンル的同人イベント」を挙げておく。