好きな“コンテンツ”こそ人生の必需品 『トクサツガガガ』が描く、特撮オタクの生き様

好きな“コンテンツ”こそ人生の必需品 『トクサツガガガ』が描く、特撮オタクの生き様

 オタクにとって、好きなコンテンツとは何か。一言で言うと「生活必需品」だろうか。少なくとも不要不急だからと簡単に切り捨てられるものではない。

 丹羽庭の漫画『トクサツガガガ』は特撮オタクを描いた作品だ。オタクの生態を描いた作品は近年珍しくないが、特撮オタクを描いた作品は希少だ。本作は、オタクと社会活動について、非常にユニークなアプローチをした作品だ。主人公を女性でOLの特撮オタクに設定し、ジェンダーバイアスや仕事の悩み、世代間闘争、さらには母子の確執などを描き、特撮から得た知識と想像力を生かして解決してゆく。まさに特撮が人生の必需品と化した人物が主人公なのである。

 ドイツのモニカ・グリュッタース文化相が、コロナ禍でのアーティスト支援策を表明した際「アーティストは今、生命維持に必要不可欠な存在」だと発言したことが話題になったが、本作の主人公、仲村叶にとって特撮はまさに日々の生存に不可欠なものになっているのだ。

特撮の知恵で社会を乗り切る

「大人になった時大事なことは、全部小さいうちに(特撮から)習うでしょ」

 本作の面白さは、この第一話に出てくる主人公のセリフに集約されていると言ってよい。仲村は、仕事やプライベートの人間関係から、社会の理不尽まであらゆる問題を特撮から学んだことになぞらえて解決してゆく。

 仕事で悩む後輩や上司を特撮のストーリー展開を想像しながら励ましたり、健康保険や年金、税金などの支払いを、部隊を維持する資金繰りと想像したり、結婚式のためのドレス新調などの出費を節約すること、特撮の制作費になぞらえて上手にやりくりしたりする。

 特撮番組は基本的に子ども、とりわけ男の子のためのものだ。主人公の仲村は大人で女性。特撮ターゲットでないがゆえに、作中ではその苦しみや肩身の狭さ、そして世間一般のステレオタイプなジェンダー表象が立ちはだかる。

 1巻に収められている第7話では、ファーストフードの子供用玩具のおまけをめぐるエピソードが描かれる。男子向けの玩具を欲しがる小さな女の子が、母親に諭されて女子向けグッズをあてがわれてしまった様を見て、仲村はかつての自分を思い出し、自分用のグッズを女の子にプレゼントする。「戦えない子供の代わり、大人と互角に渡り合う。子供の味方をしてくれるのがヒーローだ」と心の中で仲村はつぶやく。子供を救う特撮ヒーローのように、仲村もまた子供を救ったのである。

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