ウズベキスタンのプロフ、ブルネイのさごやし粉……自宅で食の世界旅行へ『世界の郷土料理事典』
雑誌のグルメ特集のようなみずみずしい写真を見て、自分で作りたくなっても大丈夫。というのも、各料理のレシピでは日本で入手可能な食材も併記されているので、材料が揃わなくて作れない、ということのないように書かれている。そして、レシピを読みながら料理ができるように、2cmの厚さの本だというのに、開いたページが閉じないような特別な製本になっているのだ。とにかく食べ物が大好きだという読者の心をわしづかみにする気遣いがどこまでも行き渡っている。
この素晴らしく楽しい料理本の著者・青木ゆり子氏は、各国・郷土料理研究家にして、世界の料理総合サイト「e-food.jp」の設立者。一流の研究家であるのは300もの郷土料理を網羅していることで明らかだが、各大陸の章立てのイントロダクションに地域性と食のルーツの解説があり、この地でこの食が愛されている理由をしっかりと伝えている。また、宗教上の食の注意点も巻末にじっくりと説明がされており、世界の食を語る専門家として、厚い信頼を感じる。
「foodは風土」とどこかで聞いたことがあるが、まさにそれを実感するバリエーションの数々が収録されている。コロナ禍が落ち着いたら、こんな民族料理のレストランに行ってみよう、海外旅行をするならこの料理を食べてみよう、と心が踊る一冊だ。
■西野由季子(にしの・ゆきこ)
編集者、ライター。NPO法人HON.jpファウンダー(元理事)。「日本のインディーズ漫画をフランスにて電書で販売」 プロジェクトを実践中。サブカルから軍事、 グルメまで幅広いジャンルで書籍を担当。近年は漫画・ アニメの取材執筆多数。
■書籍情報
『世界の郷土料理事典 全世界各国・300地域 料理の作り方を通して知る歴史、文化、宗教の食規定』
著者:青木ゆり子
出版社:誠文堂新光社
価格:2300円(税別)
https://www.seibundo-shinkosha.net/book/cooking/42987/