『のだめカンタービレ』メンバーがリモートトーク? 書き下ろし番外編で描かれた、のだめたちの現在
音楽を題材にしたコミックスは数あるが、ヒロインの個性が光る作品といえば真っ先に二ノ宮知子の『のだめカンタービレ』の名が挙がるだろう。天才かつ変わり者の両方の側面を持つ強烈なヒロイン・野田恵(通称のだめ)の恋と成長の物語は、クラシック音楽と向き合いながら切磋琢磨する人々のパワーを熱く感じることのできる作品でもある。
そして主人公ののだめを支えるエリート指揮者であり、恋人でもある千秋真一の存在も忘れてはならない。『のだめカンタービレ』は講談社より全25巻が発売されており、ドラマ化、アニメ化、映画化と多方面で映像化されている超人気作だ。
その人気の秘密はやはり、人々を引き込む魅力的なキャラクター描写と、生き生きとした音楽シーンだろう。今にも音楽が聴こえてくるかのような繊細なオーケストラの描かれ方や、ピアノの連弾場面で互いが心を通わせる様子など、「音」を通した心の交流が1コマ1コマから丁寧に描き出される。
また、生活態度はだらしないが、ピアノに対して並みならぬ才能を持つのだめの姿や、指揮者を目指す力はあるのに飛行機恐怖症で留学に手こずる千秋には、どこか親近感を覚える愛らしさがあり、キャラクターをより深く知りたいと思わせる魅力がある。
そんな本作は、2人の桃ヶ丘音楽大学での様子からパリへ留学するまでが描かれる。音楽における技術的側面の成長だけでなく、時に嫉妬や憧れ、音楽や表現と向き合う上で重要な精神的成長をリアルに表現しており、アートに携わる人々の繊細な苦悩があぶり出される。
逃げ出してしまいたくなるような強烈なプレッシャーや、目に見えず数字にも現れない“表現力”という曖昧なものを掴むために努力を続ける果てしない焦り、そこに様々な人間関係や恋愛が絡む。より複雑に交錯するリアルな感情に主人公と共に心を痛めながらも、ある種の学びも得ることができるだろう。
一方、コメディタッチで展開するストーリーにおいて、のだめの強い個性は時に笑いや癒しをもたらし読者を前向きにさせる。「カンタービレ」が示す「歌うように、なめらかに、表情豊かに」の意味の通り、まさにコミックスの世界の中で伸び伸びと音楽の道を歩むキャラクターたちの姿が印象的である。
さらに今回、コロナ禍でテレワークが増え世間に「リモート飲み会」なるものが流行したことで、作者の二ノ宮知子は『「のだめカンタービレ」リモート』なる番外編を自身のツイッターで公開した。