『かぐや様は告らせたい』四宮かぐやはなぜ愛おしい? 超負けず嫌いなヒロインの本心
最初から、「恋愛頭脳戦」に全力を注ぐ明るい四宮かぐやだったわけではない。生徒会での日々でそれまで与えられなかった光を浴びて、少しずつ変わっていったのだ。そういうことが、読み進めていくことで徐々に見えてくる。
人の心の核心部分には、簡単に触れることはできない。『かぐや様』の物語の構成がそうであるように、白銀たちは時間をかけてかぐやの心に近づき、解きほぐしていく。そしてそれは他人だけでなく、自分の心についても同じかもしれない。
物語の中で四宮は、戦略を巡らす「通常かぐや」だけでなく、四宮の規律を重んじる「氷かぐや」、恋に浮かれた「アホかぐや」など様々な顔を見せる。時には彼女たちがそろい踏みして脳内裁判が開廷され、それぞれの立場から意見を戦わせたりもする。白銀の誕生日を祝うべきかという議題で混乱を極めた際、「誰が決めるんですか」と困惑する「通常かぐや」に、残りの3人は言う。
“私たちは貴方”
“決めるのは貴方”
“”ねえ、「私たち」はどうしたい“
人の心は揺れ動く。冒頭で「四宮かぐやの多面性」と書いたけれど、虚勢や臆病によっていくつもの建前を持つのは、人間誰しも同じこと。本心というものは、それらを丁寧に描き分けてようやくたどりつけるものなのかもしれない。
かぐやはその日、自分の気持ちに従って、白銀にケーキとプレゼントを贈る。
“会長、お誕生日おめでとうございます”
初めての恋に翻弄され、色々な表情を見せる「かぐや様」が、少しずつ自分の心に素直になっていく様子は、ただただ愛おしい。
■満島エリオ
ライター。 音楽を中心に漫画、アニメ、小説等のエンタメ系記事を執筆。rockinon.comなどに寄稿。満島エリオ
Twitter(@erio0129)