『鬼滅の刃』鬼殺隊はなぜ“日輪刀”を武器にする必要があったのか? 刀鍛冶たちの誇りと情熱

『鬼滅の刃』鬼を倒す日輪刀

 結果、その刀で――鋼鐡塚としてはまだ第一段階までしか研いでいないので不満のようだったが――炭治郎は上弦の鬼のひとり(半天狗)を討つことができたのだが、そんな炭治郎の想いに触れたことで、無一郎も刀鍛冶に対する考え方を改めるようになる。いや、そもそも彼には彼のことを心配する鉄井戸(故人)と鉄穴森という担当の刀鍛冶がおり、小鉄という里の少年との心の交流も含め、そのことにようやく気づかされたというべきか。

 いずれにせよ、本作で描かれている、戦う者とそれを支える者の関係性は美しい。先に引用したセリフの最後で炭治郎はこうも言っている。「俺たちはそれぞれの場所で日々戦って」いるのだと。そう――これは剣士や刀鍛冶に限らず、多かれ少なかれ、現実社会を形成するすべての「働く人々」についても言えることであり、だからこそいま、『鬼滅の刃』という虚構の物語に多くの人たちが共感しているのではないだろうか。

※ 本稿で引用した漫画のセリフは、読みやすさを優先し、一部句読点を打たせていただきました(筆者)

参考文献:『鬼と日本人』小松和彦(角川ソフィア文庫)/『鬼の宇宙誌』倉本四郎(講談社)

■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。@kazzshi

■書籍情報
『鬼滅の刃(1)』
吾峠呼世晴 著
価格:本体400円+税
出版社:集英社
公式サイト

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