『ちはやふる』最年少クイーン若宮詩暢の強さと孤独 誰にも真似できないかるたとは?
若宮の自陣は、かるたとしてではなく歴史上に存在した人物たちとして配置されている。たとえば、ライバルであった2人のかるたを近くに並べるなどは決してしない。擬人化されたかるたの声を聴き、それを迎えにいくだけだという若宮独自の強さは、長い間たったひとりでかるたと向き合っていたために作られた要塞のようなものだ。かるたと若宮の強い縁は誰にも崩すことができず、ひとりぼっちで強くなっていった。若宮に勝とうとするにはその強い縁を邪魔するしか方法はない。
千早が菅原道真と崇徳院のかるたを隣り合わせに置いたとき、若宮は千早があえてそう配置したことに気づく。二人は日本三大怨霊と怖れられているのに、千早はわざとこの怨霊たちを並べ歌人らの居心地を悪くした――そう確信した若宮は脅威的なスピードで重要な一字決まり「せをはやみ」を取り、ざわついていた歌人らの機嫌と信頼を回復する。研究し尽くした千早の作戦が戦いをかき乱したかと思われたが、このことで流れは若宮に向き始める。
最新44巻は、今までになく情報量の多い巻だった。競技かるたの常識である一字決まりや送り札の選び方は当然で、さらに百人一首としての歌人の情報等が入り、内容がより濃くなっている。しかし元クイーンの渡会・猪熊や千早の師匠である原田が、トップレベルの試合を理解し案内してくれる。千早の同期であり古典オタクの大江の知識や洞察も光る。
若宮がひとりぼっちで作り上げてきた世界に入り込んでいく千早が、第二局目でどうなっていくかはぜひ『ちはやふる』最新刊を手に取ってほしい。
■書籍情報
『ちはやふる』44巻(BE LOVE KC)
著者名:末次由紀
出版社:株式会社 講談社
定価:本体450円(税別)
出版社サイト(44巻)