一夜を共にした男女の朝食にはドラマがあるーーグルメ漫画『ワンナイト・モーニング』が描く「性」と「生」

グルメ漫画『ワンナイト・モーニング』評

「性」もまた「生」の一部

 この作品では、恋人同士(違う場合もある)のセックスシーンも多い。とはいっても、艶めかしく扇情的なベッドシーンというわけではない。深い仲となった2人が互いを求め合い触れ合うという、いたって自然な流れで始まる夜の場面は、人間が生きてゆく中で切り離すことのできない事実として、「性」を隠すことなく静かに描いている。愛する恋人と抱き合うことも、昂った欲に身を任せることも、「生」の一部なのである。夜が明けて服を身にまとい、朝食を口にする時にはもう、気恥ずかしさこそ残っていても昨晩の姿は誰にも伺えない。そうして人間は、日々を生きているのだという誰も教えてくれないことをそっと伝えてくれる、穏やかな熱を持っている。

 連載開始当初は1巻で終わる予定だったというが、読者から支持され連載が延期。現在連載中のエピソードを収録した3巻の刊行も予定されているという『ワンナイト・モーニング』。次号ではどんな2人がどのような夜を過ごし、ごはんを食べる朝を迎えるのか。さらに、話数を重ねるごとにより親密になっていくカップルにどのような未来が待ち受けるのだろうか。モーニングコーヒーを傾けながら楽しみたい作品だ。

■誉田優
フリーライター・記者。ドラえもんと共に育った生粋の漫画好き。
Twitter:@yu__honda

■書籍情報
『ワンナイト・モーニング(2)』
奥山ケニチ 著
価格:本体650 円 +(税)
出版社:少年画報社
公式サイト

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